コロナ禍で「出前館」は飲食店の救世主となるか 出前やテイクアウトのニーズが増えている

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配達員の1人に聞くと、このエリアはオフィスのほかに個人宅も多く、現場としてもこのところはランチ、ディナー帯の時間を問わず、需要が増えている感触を得ているとのことだ。

商品を入れる保温ボックスや手指のアルコール除菌は、食べ物の匂いが移るのを避けるほか、衛生面の観点から以前より行っていたため、コロナウイルス状況下だから特別ということではないが、「やはり今の時期は余計に気を遣っている」と話す。

商品を入れる保温ボックスなどを消毒する様子(筆者撮影)

さらに同社では3月24日より、「非接触デリバリー」対応を開始した。キャッシュレス決済および、配達員と接触することなく商品の受け取りができる「置き配」を推奨しているという。

「当社ではお届け先や商品の間違いがないよう、対面での受け渡しを基本的なルールとしてきました。とは言っても、やはり希望のお客様に対しては柔軟な対応をとってきたところがあります。加えて、このたびの新型コロナウイルスの影響で、非接触デリバリーを希望されるお客様が増えてきていました。そこで当社としても、商品の受け渡しや釣り銭のやりとりなどでの感染リスクを軽減するために、キャッシュレス決済、置き配の推奨をしております」(広報担当者)

置き配は本来、サービスのうえでは不親切と言えるだろう。手渡しによる人間的な接客ができないだけでなく、食べ物を床などの上に置くということ自体、直接菌などが付着する可能性は低いとしても、なんとなく汚いのでは、という気持ちのうえでの不快感がある。

しかし今はそれよりも、人を介さないことがよりよいサービスと捉えられるようになっているということだ。

キャッシュレス注文も増加

キャッシュレス化に関しては、キャッシュレス払いによる消費税の軽減施策(2020年6月末まで)とも関係する。現在コロナウイルスの影響でこの施策が延長されたり、消費税がゼロになる可能性もあるかもしれないが、いずれにせよ家計が苦しくなる中、少しでも出費を抑えようと、普及に拍車がかかると考えられる。

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実際出前館でも、具体的な数字は非公開ではあるが、キャッシュレス注文や対応店舗は増えているとのことだ。

現在の状況下では、とくに飲食店において、いくら優れたサービス、商品であっても手放しで推奨できないムードとなっている。しかしその中でも、人は食べないわけにはいかないし、飲食店にとっては存亡がかかっている。また消費者が財布のひもを締めることによる経済縮小も憂慮される。感染リスクをできるだけ低くしながら、おのおのが頭を絞って、ピンチを切り抜けられるサービスを編み出していくしかない。各社の実力を試されると言っても、あまりに厳しい局面ではある。

圓岡 志麻 フリーライター

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まるおか しま / Shima Maruoka

1996年東京都立大学人文学部史学科を卒業。トラック・物流業界誌出版社での記者5年を経てフリーに。得意分野は健康・美容、人物、企業取材など。最近では食関連の仕事が増える一方、世の多くの女性と共通の課題に立ち向かっては挫折する日々。contact:linkedin Shima Maruoka

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