坂上忍さん「大変なときに自分をいたわる技術」 何度も失敗しながら学んできたこと

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――私は幼いころから女優になりたいと思い、劇団に入っていたこともあります。けれど祖父が亡くなったのをきっかけに、心の病になりました。今は家で安静にしているんですが、自信を失いかけています。「こんな自分が女優になれるのだろうか」と思い、とても不安です。(17歳、女性)

僕が劇団に入ったのは、祖母の死がきっかけだったらしいんです。自分では覚えていないけど、2歳7カ月のころに、大好きなおばあちゃんが亡くなってから、一言もしゃべらなくなった。

子どもからの質問に答える坂上忍さん(写真:不登校新聞)

「これはまずい」と思った母が、近所にあった児童劇団に僕を入れたそうです。劇団で友だちができてからは、すぐにべらべらしゃべるようになったそうですけど。

僕のスクールでも精神的な病気を抱える子はいます。そうなったら僕はかならず、親御さんと本人と話をします。

親御さんに聞くのは「ほかの子がどんどん先に進んでいく中で、立ち止まっている本人はきつい思いをします。それでもいいですか」ということ。そして本人に聞くのは「演じることがどこまで好きなのか」ということです。

スクールに来るくらいだから、当然やる気はあるでしょう。だけど現実を知って挫折してしまうこともあります。

成功から学べることは少ない

今、あなたが女優になりたいって強く思っているなら、諦める必要はまったくないです。でもずっと家にこもって悩んでいるだけならば、時間がもったいないとは思います。

今できることを考えて、具体的な行動をとったほうがいい。そうしたら気持ちは不安なままでも、目の前のことをやっている間は不安を忘れていられるでしょう。

行動をすることで先に進んでいけるかもしれないし、ほかに興味のあるものを見つけられるかもしれない。

ひとつ言えるのは、苦しい時期を価値のあるものにできるのは、ほかの誰かでもなく自分しかいないということです。

いつか「あのときの経験があったから、今の私がいる」と思えたら強いよね。僕のスクールでも、失敗こそが成功につなげられるということを教えています。

成功から学べることって、あんがい少ないものなんですよ。

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