不織布のマスクは、家庭医マスクとして広く普及しているものだが、もともとは医療現場で使われていた。最近、よく耳にする「サージカルマスク」というのがそうだ。
近年、咳エチケットや花粉症対策などで需要が一気に伸び、家庭用マスクの素材をしての利用が9割以上を占めているという(一般社団法人日本衛生材料工業連合会による)。
「サージカルマスクはその名前のとおり、本来は手術(Surgery)のときに外科医が着用するもの。手術中、会話をするときに医師や看護師らが放つ飛沫が、患者さんの術野に飛ばないためにします」
そのほか、患者の血液や体液が付かないようにするという役割もある。
医療現場では「N95」という名前のマスクも使われている。これは結核など感染力が強い感染症にかかった患者を診るときに着用する特殊マスクで、こちらは「医療従事者の感染予防」が目的となる。編み目が細かいため息苦しく、長い間、装着できないと永井医師は言う。
「口や鼻に触れない・気道を潤す」も大事
②「無意識に手で鼻や口を触るのを防ぐことで、接触感染を防ぐ」ことはできるのか。私たちは1日で何回、口や鼻を触るのだろうか。オーストラリアの研究で明らかになっている。これによると、26人の被験者(学生)は平均で1時間に23回、口や鼻、目に触っていた。
「マスクを着けていると物理的にマスクが邪魔になるため、口や鼻に触らなくなります。新型コロナウイルスは接触でも感染しますから、マスクを着けておくと手に付着したウイルスが口や鼻の粘膜に付くことを予防できます」
一定程度の効果はあるといえそうだ。
続けて、③「気道の乾燥を防いで粘膜を守る」効果はどうか。
普段、気道は分泌物を痰として出すことで中に入ってきたウイルスや細菌など病原体を除去している。気道が乾燥すると分泌物が減り、病原体が除去されなくなる。また、気道の粘膜には免疫システムが備わっているため、乾燥によって粘膜が傷害を受けると免疫システムも弱まってしまう。
いずれにしても、気道が乾燥するほど呼吸器の感染症にかかりやすく、反対に、湿気のある自分の息で潤すことができれば、ウイルス感染から身を守ることができるかもしれないという。
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