流れを予測できない、日銀の金融政策 不確実性とは何か

✎ 1〜 ✎ 37 ✎ 38 ✎ 39 ✎ 最新
拡大
縮小

さて、金融市場でも同じだ。金融投資のことだ。サプライズだけが利益をもたらす。織り込み済みでないことだけが値上がりをもたらす。

しかし、織り込み済みでないこととは何か。それが問題だ。ナイトの不確実性の正体とは何か。それが問題だ。

「世界大戦」と「バブル」の共通性とは?

クリミア半島の動きはサプライズだが、事後的に考えてみれば、すべてのことは合理的だ。予想できたような気がする。プーチンはプーチンらしいし、ロシアとはこういう動きをする実績を持つ国であるし、ロシアとウクライナの関係は周知の通り、これに欧州が絡んでいったのも、皆知っていた。米国が中途半端な姿勢をとるのもいつものことだし、米英に比べ、日本や欧州は、理屈抜きにロシアに寛容すぎるし、これもいつもどおり。冷静に考えれば、クリミアの住民の意向は投票するまでもなくわかっていて、流れが傾けばこうなる。では、予想できなかったこと、想定外は何だったのか。

それは、この「流れが傾く」ということだ。

各要素はわかっても、それが流れを作ることは想像できなかった。なぜなら、一つ一つの要素を独立に見ていては、そうなる可能性はそれぞれに低いからだ。可能性が低いと認識されることが二つ以上重なると、人間は、可能性は実質ゼロと判断する(これも個人的な仮説だが)。だから、予想できない。

第一次世界大戦がなぜ起きたか。なぜあんな大規模なものとなってしまったか。これも大きな謎とされているが、実は同じことではないか、というのが私の仮説だ。たいした戦争にならないと思って始めたが、流れができてしまうと、それが膨らんでいった。後戻りするべきだが、個別には出来ないので、どんどん持っていかれてしまったということだ。

世界大戦は私の領域ではないが、バブルはまさにこれだ。バブルでなくとも、毎日の株式市場、為替市場もこれだ。

次ページ一つ一つのことは予想できても・・
関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT