鬼滅の刃が「日本中で愛されまくる」4つの理由 「劇場版公開」の今年こそさらなる飛躍に注目

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少年マンガが時として、多くの世代の男女から人気を集めるのは昔からしばしば繰り返されている。1980年代の『キャプテン翼』は、キッズや若い世代の男性に人気だったが、一方で若い女性にも熱狂的なファンは多かった。

逆のパターンでは、1990年代の少女マンガ『美少女戦士セーラームーン』は、当初は女児向けだったが、ヤングアダルト層の男性女性に人気を博し爆発的なブームにつながった。

特定の世代、クラスターだけではヒットに限界がある。想定した枠を打ち破り、複数のレイヤーに届いた時、作品は空前のヒットになる。子供から大人、男女を問わず共感を得ることで『鬼滅の刃』のブームは誕生したのだ。

魅力的な物語

★ヒットの理由3:のめり込みやすい設定

もちろん物語としての魅力もヒットに貢献している。それは誰もが愛し、はまりやすい設定だ。「鬼」と「鬼殺隊」の敵味方の対立がシンプルでのめり込みやすい。

また、鬼殺隊は複数の隊に分かれたチーム制、さらにそれぞれの隊は「柱」と呼ばれるリーダーを中心にヒエラルキーが設けられている。このなかで友情、ライバル、先輩後輩といった構図が生まれる。それぞれの立ち位置から多彩なキャラクター設定が可能になる。

こうしたシステムは、往年の大ヒット作『聖闘士星矢』、ジャンルが異なるが宝塚歌劇団にも共通する。

宝塚歌劇団では各役者への人気が、長い歴史を支えてきた。昔から続く物語の魅力を高めるためのシステムを踏襲したことも、『鬼滅の刃』の面白さの秘密のひとつでないだろうか。

★ヒットの理由4:偶然生まれた「枯渇感」

大ヒットの誕生には、しばしばいくつもの偶然の積み重ねがある。『鬼滅の刃』に偶然があるとすれば、2019年秋以降のマンガ単行本の供給不足かもしれない。

急速な売れ行きに対応できず、ピーク時は店頭でもネットでも、単行本が手に入りづらい時期が続いた。手に入りづらいとさらに所有欲をかき立てられるのが、人間の性だ。

品不足が話題に拍車をかけ、『鬼滅の刃』への関心と話題はファン以外にも広がりだす。それをきっかけに作品を手に取り、読みだせば面白い。スパイラル状に人気が積み上がっていく。

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