人の話を聞かない「リーダー」が意外と多いワケ 自分の考えを発信する事に心を奪われている

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サバルタンを研究する歴史学者は、期待の外側にあるアイデアに耳を傾けることがいかに難しいかを指摘する。

自分の属している文化や経済の観点から少しでもずれた情報を示されると、人は相手の言葉に耳を傾けるのをひどく苦痛に感じる。期待の限界まで達するイノベーションの話に至っては、聞くのをやめてしまう人も多い。

たとえ聞いても、話を歪めて自分の期待にはめ込もうとする。悲劇に見舞われて初めてサバルタンの声に耳を澄ませ、それが認識と違っていたことに気づくのである。

権力者がイノベーションを拒否する理由

オルタナティブボイスを軽視する傾向は、今日の組織でもよく見られる。リーダーはしばしば革新的な考えを、役立たずのアイデアや、すでにあるアイデアに分類して退ける。

その動機はいくつかある。アイデアを自ら分類することでそれらを支配し、権限を保ちたいから。理解できないアイデアがあるのが嫌だから。

このように考えるリーダーは、実際は理解できているのだと思いたくて、イノベーションを既存のアイデアに分類する。現状に満足していて新しい考えに取り組むのを面倒に感じるから、という動機もある。

リーダーと天才の力の差から、リーダーが天才の言葉を軽んじることもある。権力を持つだけでリーダーは聞く気をなくす、という研究もあるほどだ。

強い力を持つリーダーは、新人の意見も専門家のアドバイスも等しく無視する。自分の判断に絶対の自信があるので、アドバイスをくれる人に対抗意識を抱いてしまうのだ。部下のイノベーションを認めたら、自分が厄介払いされると思っているのかもしれない。

同じ研究から、「自分には権力がほとんどない」と感じている人は、新人もベテランも他人のアドバイスによく耳を傾けるが、とくに重視するのは自分が権力者だと思う人のアドバイスで、相手がその分野に詳しいかどうかは関係ないことがわかった。まさに「権力の気づきは知識の気づきに勝る」のである。

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