人の話を聞かない「リーダー」が意外と多いワケ 自分の考えを発信する事に心を奪われている
話を聞かないことでそれほどの影響があるなら、なぜリーダーは聞くことにもっと集中しないのか。
ひとつの理由として、権力を持つリーダーほど、失敗のペナルティーを受けにくくなることがある。そのために、強い権力を持つリーダーは他人のアイデアに耳を貸さないことが多い。
別の研究によれば、権力を持つリーダーが他人の考えを聞かないのは、人の意見に縛られずに意思決定したいからだとされる。チームの考えを理解すべき理由がなく、ミスの影響も受けないなら、話を聞く必要はないというわけだ。
組織で力を持っているリーダーは、専門家の意見を待たずに拙速な意思決定をすることがしばしばある。権力を持っているとミスの責任を問われにくいからだ。判断の根拠となるデータを集めたり、他人に意見をじっくり聞いたりする意欲も薄い。
権力を持つリーダーは、その組織が存在する限り、自分の判断ミスの影響を権力で封じられる。逆に言えば、権力がないと判断ミスの影響をもろに受けることもある。
組織はダメになる
組織での地位が上がるほど、ちょっとやそっとの判断ミスでは罰せられなくなる。しかし、話を聞かないで判断を誤れば、そのミスの重みはいずれリーダーの権力基盤を潰す。そうなるとその組織は死んでしまう。
リーダーになるだけで話を聞かないリスクが増えるなら、それを避けるための戦略が必要だ。
リーダーが他人の考えを聞かないことに関する前出の研究では、そうしたリーダーもよりよい聞き手になりうることを示した実験が紹介されている。権力を持つリーダーとアドバイスを授ける人に協調心を植えつけたところ、リーダーがアドバイスにもっと耳を傾けるようになったのだ。
ということは、会社の研修などでよくする、あの子どもだましのようなチーム作りの練習も、まったく意味がなかったわけではないのかもしれない。協調性を高めれば、部下である天才に模範を示せるのだから。チームの一員だという意識を持てれば、天才はもっと話を聞くだろう。
よいリーダーは、話をもっと聞くための正しいプロセスを整え、最良のアイデアにたどり着く。すぐれたリーダーは、部屋中の天才にそれをさせられる。