このような状況を受け、住宅を供給する事業者も対応に追われている。複数の大手ハウスメーカーに問い合わせをしたところ、「契約で定められた期日に竣工・引き渡しができない状況が出始めている。お客様への説明など全社をあげて対応を行っているところ」などという話が聞かれた。
また、「お客様との合意のうえで、代替品を設置することで対応している」というコメントもあった。大手の場合、ある程度の在庫をつねに確保していたからこうしたことが可能なわけだが、それができる事業者ばかりではない。
設備の確保、設置ができないことで、竣工・引き渡しができず、そのために工事代金の回収が難しくなったケースもあり、リフォームを含む中小規模の事業者に経営不安が広がった。
そこで、国土交通省は2月27日、施主の理解を前提に、一部の設備などが設置できないことを理由に工事完了を認めないということがないよう、柔軟に対応するように都道府県や関係機関・団体に通知。これにより、住宅ローン会社から事業者へ住宅の工事代金が支払われるようにした。
以上が、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う、住宅事業者を取り巻く事態の概要である。国交省の通知により、あくまで事業者の混乱はある程度落ち着くと考えられるが、問題はそれほど簡単ではない。
さらなるトラブル回避へ施主も自助努力を
トイレなどの設備がない住宅に入居することは、施主にとっては不便極まりないことである。結果的に入居をいったん諦め、仮住まいのための費用など想定外の負担を負うといったことが現実に起こっているからだ。
また、今後、各種設備の品薄状態が解消された場合でも、事業者が設置工事にしっかりと対応してくれるか、などといった不透明な部分も残る。事業者にもこなせる仕事のキャパシティに限りがあり、一気に対応できるわけではないためである。
そのため、上記のような事態に直面している方は、事業者との詳細な取り決めを行い、決定事項について文書などとして詳しく残しておくなど、施主側にも今後のトラブル拡大を回避するための自助努力が求められそうだ。
今の時期に設備が品薄状態になっていることの要因として、住宅産業特有の事情も影響している。年間で3月末に竣工・引き渡しが集中するためである。これは子どもの新入学・新学期に合わせて入居したいという顧客ニーズによるものだ。
仮に新型コロナウイルスの感染拡大が、別の時期であったなら現在のような混乱には繋がらなかった可能性がある。同じ内需の柱である自動車などの他産業で、あくまで現時点で住宅産業ほど喫緊の状態でないのはこのためである。
ところで、戸建て住宅1棟に、どれくらいの部材(部品)が使われているか、皆さんはご存じだろうか。例えば、大和ハウス工業のホームページによると、「住宅の部材・部品数は1棟あたり1万点」としている。
これは鉄骨プレハブ造のケースであり、もちろんおおよその数である。同じ大きさの建物であっても形状、工法、敷地の状況などにより、それぞれの住宅を構成する部品の数は異なってくる。
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