大和ハウス工業の「1万点」は、構造体に関するものと考えられるが、設備機器を含めると部品点数はさらに増える。機器1つにも数百点、数千点レベルの部品で構成されているからだ。ここでは、住宅というのは、膨大な数の部品で成り立っているということをご理解いただければと考える。
また、住宅1棟を供給するのには、多種多様な業態の事業者が全国津々浦々で関わっている。部品や素材だけをざっと見ても、木材や鉄、コンクリート、ガラス、プラスチックがあるし、その加工、物流、製造、さらには大工など建築に携わる人々など多種多様だ。
筆者の知り合いに住宅ローンを専門に扱う金融会社に勤務する人物がいるが、「国土交通省による工事完了の柔軟化についての通知を受け、工務店などの住宅事業者に支払いが実行されるよう、調整にてんやわんやの状況」だという。彼らも住宅産業の担い手の1人なのだ。
要するに、住宅産業は裾野が広いため、国全体はもちろん、地域の雇用と経済への影響が大きいということをご理解いただければと思う。そして、このような重要性を持つ住宅産業の危機であるからこそ、前述した国土交通省による柔軟な対応を求める通知が早期に行われたと言える。
消費増税後の厳しい市場環境に追い打ち
仮に新型コロナウイルスの感染問題が今後も収束しない、あるいは感染がさらに拡大するようなことになれば、さらに日本経済への悪影響は広がり、甚大になる可能性がある。
感染地域はヨーロッパやアメリカなど全世界に広がり、とくに3月中旬からはタイやフィリピン、マレーシアなどの東南アジア地域では、市民の外出制限などによる感染予防のための非常措置が取られている。
日本の住宅産業は、木材や建材の調達を東南アジア、北米など広範囲に依存しており、仮に一層の状況悪化があるようだと、さらに調達困難な部品・部材が増加するといった悪影響を受ける可能性も否定できない。これはあくまで最悪のシナリオにすぎないが、そうならないよう早期の感染収束を祈るばかりだ。
一方で、日本の住宅市場はただでさえ昨年10月の消費増税を受け厳しい環境にあるが、感染拡大防止に向けた外出の自粛ムードが厳しさに追い打ちをかけている。住宅展示場への来場者が減ったり、先行き不透明の中で買い控えたりなど、顧客の住宅購買マインドが一層低下しているからだ。
あるハウスメーカー幹部が「(自治体による外出自粛要請や設備の供給などを含め)状況は日々、刻々と変化しており予断を許さない」と話すように、住宅産業に関わる多くの人たちが、今後の行方を息を潜めながら見守っているのが現状だ。
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