「妻が夫の子育てにイラつく」のが至極当然の訳 女と男は生物的にどうしても得手不得手がある

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例外はある。マウスは、オスも小さいうちから子どもを温めたりして、かいがいしく小さい子マウスの世話をするが、そこにはからくりがあった。

菊水氏が観察したマウスの母子。一夫一妻制でオスと一緒に育児をする(写真提供:菊水健史さん)

「マウスは妊娠中のつがいを同じケージに入れておくと、メスのフェロモンでオスのテストステロンが下がってしまうんですよ」

つがいを形成する動物では、父親が養育に携わることが多い。これは自分とずっと一緒にいるメスの子なら、わが子であることはある程度担保されるから。

でも、同じげっ歯類でも、ラットのオスはテストステロンが下がらず、子どもが生まれてきても何もしない。

ニホンザルの子育ては基本的に母親の役割(写真提供:高尾山さる園・野草園)

「私たちも育児行動の実験を重ねていますが、育児をしない種のオスに育児をさせるのは、もう大変なんです。でも、マウスのオスも、テストステロンを作る器官である睾丸を切除したら、途端に育児を始めました」

マウスの世界でも、父親の育児はかくも厳しい。

では、ヒトの育児はどんな原型をもっているのか。

哺乳類のもうひとつのタイプは「共同養育」で、近年、生物学の世界ではこのスタイルが注目されている。ヒトは、このグループの代表だ。

まさに戦前の日本

「ヒトは、母親1人で子どもを育てる種ではありません。母親が中心ですが、祖母、姉妹と共に、集落の女性たちが協力して育てます。男性は、子どもがある程度大きくなってから子どもと遊ぶようになります」

まさに、戦前の日本だ。

「これはヒトや一部の動物にしか見られません。ラット、イヌ科の動物、あとはミーアキャットやプレーリードックなども、とても上手に共同養育をします。お祖母さん、お姉ちゃんに当たる3~4頭が母親と一緒に育児をすることが多いですが、血縁関係がないこともあります」

ヒトは共同養育の傾向が顕著で、子育てに関わる女性の人数がとても多く「集落に住む女性全体が育児に参加する種」とさえ言われている。

「私は、今、その形が崩れているのが、育児が大変になっている最大の原因だと思います。経済効率をよくするために若年人口を都市部に集中させ、転勤族を作った企業がそれを壊してしまいました。昔の長屋暮らしにあった深い懐から若者を引っ張り出し、ヒトという種が本来持つ、子どもを育むネットワークを分断してしまったのです。

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