大塚家具、ヤマダ電機傘下で赤字脱出なるか 家電と家具の共同展開でも道のりは険しい
ところが会社の先行きへの不安や経営陣への不信感もあり、現在の大塚家具の社員数は2015年末から4割以上減少。目利き力を備えたバイヤーや営業スキルを持ったベテラン販売員が次々と退職した。それにつれて強みだった品ぞろえも陳腐化し、顧客への商品提案力も衰えを見せる。
社員の減少による人件費減の一方、大塚家具の利益を圧迫するのが年間65億円の賃借料(2019年実績)だ。売上高対比で24%に達し、とくに新宿と銀座の店舗の負担が大きい。既存店の売り上げ回復が実現できないままでは、一段の店舗整理を求められることになる。
ヤマダはこの現状をどう捉えているのか。実はヤマダにも、大塚家具の黒字化へ向けた具体策があるわけではない。ヤマダが描く将来ビジョンの主体はあくまで「ヤマダ」だ。大塚家具はヤマダの再成長に必要な“パーツ”にすぎない。
限界に近づくビジネスモデル
「量」や「安さ」で勝負してきた家電量販店のビジネスモデルは、人口減少やECの拡大を受けて、限界を迎えつつある。ヤマダの業績は2011年3月期の売上高2兆1532億円、営業利益1227億円をピークに低落傾向で、2015年3月期には営業利益が200億円を割り込んだ。
海外の機関投資家も警鐘を鳴らし、ヤマダは15年に、お家芸だった出店攻勢に終止符を打つ。出店セール用に大量に抱えていた型落ち商品の在庫を減らし、粗利益率を下げないよう既存店で魅力ある新商品を売る戦略に切り替えた。
家電と家具を組み合わせながら客に生活シーンを提案していく手法は、ヤマダ首脳陣が見いだした新戦略の柱。家電と家具のセット提案を充実させた「家電住まいる館」を17年から始め、今や100店舗を超える。次世代ヤマダの稼ぎ頭に成長させたい思惑が山田会長にはあった。しかし難題が立ちはだかる。ヤマダで扱う家具は、「どうしてもニトリと比較されてしまった」(山田会長)のだ。
国内の家具市場は、首位のニトリホールディングス(2019年2月期売上高6081億円)が島忠(2019年8月期売上高1463億円。他事業含む)などを引き離して断トツ。この競争環境下でニトリと同じ大衆向けの安価な家具を売っていたら、客足は知名度で勝るニトリに向かう。
そこでヤマダが目をつけたのが、ニトリとの比較対象にはされにくい高級家具を扱う大塚家具だった。