35歳シングルマザーがウルトラマンにすがる訳

1人で仕事と子育てに挑む彼女の心の支え

慌てて引っ越した現在の家も、運良く優しい近所の人たちに恵まれて、かつて夫も入れて3人で暮らしていたときには考えてもみなかったわが子との宝物もたくさん増えました。

「1人暮らし用の狭い部屋に2人で住んで、もう笑うしかないって感じでしたけど、住めば都ですね」

離婚や引っ越しのときの心労を思うと、ウルトラの母さんのほうが心配になってしまいますが、「母ちゃんはね、息子がいるから頑張れる」と微笑む姿は、ピンチになっても必ず打ち勝つヒーローのようでした。

私にしかできない仕事を求めて

ウルトラの母さんは物心ついた頃から舞台劇に慣れ親しんでいました。

冷蔵庫や洗濯機にもウルトラマングッズが……(撮影:川本 史織)

両親にレンタルビデオ屋へ連れて行かれると、いつも「三匹の子豚」と「みにくいアヒルの子」と「ヘンゼルとグレーテル」の人形劇のビデオをローテーションで借りてもらって、繰り返し再生したものです。

近所に住宅展示場があって、そこで週末開催されているキャラクターショーにも、よく連れて行ってもらいました。

しかし、当時は単純に「楽しい」という気持ちだけで、熱中するほどではなかったと言います。

小学生になり、中学生になってからも、何かに夢中になることがない性格で、好きなアイドルの話ではしゃぐ同級生たちを見ていると、うらやましく思ったくらいです。

転機が訪れたのは高校生のとき。学校行事で舞台を観てから、舞台観劇が趣味になりました。

見方が限られている映像と違って、舞台なら自分の好きなところに注目できる。幼い頃には言語化できなかった劇の魅力を理解できたのがきっかけでした。

たとえ主役の見せ場でも、舞台の端っこにいる役者が気になれば、好きなように見て楽しめます。その面白さに気づいてからは、急速に観劇の楽しさに引き込まれていきました。

高校を卒業してすぐに就職したのも、ショーの仕事に携わりたかったからです。

トイレの窓にウルトラマンや怪獣のシルエット(撮影:川本 史織)

人前に立ちたい気持ちはなかったので、舞台役者ではなくて、裏方の仕事がないか探しては面接を受けて、数々のショーのスタッフとして働きました。

仕事に対しての向上心が高く、どの職場でも、全力で働いて昇級して、この職場でやりきったと思ったら、数年で別の舞台の仕事に転職するのを繰り返してきました。

どこでも数年働くと、いつもほかの世界を見てみたい衝動に駆られるのです。最終的には正社員を辞めてフリーランスになって、1度に複数の舞台の裏方として働くようになりました。

しかしいま振り返ってみれば、転職を繰り返していた理由は、ほかの世界を見たかっただけではなかったかもしれません。

「私にしかできない仕事を探し続けていたんだと思う」

自分の本心に気がついたのは、子どもが生まれてからでした。

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