ナナイさんと会ったのは新宿の喫茶店でした。
つい最近まで栃木県宇都宮市にある家で、趣味のコレクションに囲まれながら、猫のアンチョビと年下の恋人と暮らしていました。
職業はフリーライターで、ゲーム関連の文章を主に執筆していますが、月の半分ほどはこうして都内へやって来ては打ち合わせをしたり、浪費癖を賄うためにキャバクラ嬢として働いたりしているのです。
「私、ずっと付き合ってる男の人と住んでるんです」
そう話すナナイさんが初めて同棲したのは18歳のとき。両親のいる実家から逃れたい一心で、東京に暮らす男性の家に転がり込みました。
それから今日までだいたい2~3年おきに恋人が変わって、そのたびに家から家へと移り住んでいます。
これまでは都内の物件を転々としていて、「今回の宇都宮は特例」だとほほ笑んで言いました。
恋人とともに住む家も替わる
立ち入った質問かと思いつつ、恋人との別れに合わせて引っ越していると、引っ越しシーズンにかぶってしまうのではないかと尋ねたら、「わりと穏やかに別れるので大丈夫です」と返事がありました。
毎回、別れ際は円満で、落ち着いて引っ越せるタイミングまでは平穏に同棲を続けているようです。
「いつもこれが最後だと思うのにね」
何気なくナナイさんの呟いた言葉に、勝手に少し感傷的になります。
なにもいい加減に転々としているわけじゃないのです。でも今ではすっかり引っ越しの達人になってしまいました。
部屋には好きなゲームやアニメのグッズが、本人も「把握できない」ほどたくさんあって、とても単身引っ越しパックの量には収まりません。
引っ越すたびに整理して……ということはなく、長く持っているほど愛着が深まるので、コレクションは増える一方です。
まだ実家に住んでいた頃、窮屈で陰鬱としていたナナイさんの暮らしを支えていたのが、ゲームやアニメと文章を書くことでした。
「高校生のときはうつって治らないと思ってました。まだつらいときもあるけど、今はなんとか」
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