東京で夢追うシナリオライター女子の転々生活 いいかげんな訳じゃないけど引っ越しの達人に

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専門学校は卒業できませんでしたが、シナリオライターの知人から教わって、仕事でケータイゲームのシナリオを書くようになりました。

シナリオを書くときは、オリジナルの童話を書いていたときのような創作欲が働いて、ゲームが好きな気持ちも生かされます。

ゲームのシナリオを描くときは、創作欲が働き、ゲームが好きな気持ちも生かすことができる(撮影:川本 史織)

その後、出版社と業務委託契約をして、ゲームメディアの編集部で働くようになると、紹介記事を書くために新しいゲームに触れて、ますますゲームが好きになって夢中になっていきました。

仕事にやりがいはある一方で、編集部の初任給は交通費や保険なども込みで月13万円。働いているのに交通事故の慰謝料で得た貯金を切り崩す生活でしたが、最初は修行だと思って耐えていました。

もちろんずっと我慢していたら暮らしていけません。編集部で任される仕事のほかにも、自分で営業して仕事をどんどん取ってきて、売り上げが立ったら昇給の交渉をすると決めていました。

「得意なわけじゃないけど、フリーランスは交渉しないと収入が上がらないから言わないと損だと思ってます」

3年後に編集部を辞めるときには、交渉に交渉を重ねて月給は35万円まで上がっていたそうです。

東京で自立して生きる

編集部を離れたのは、過労が理由です。仕事が取れるようになった一方で、プレッシャーも重なっていたのだと思います。退職後はしばらく働けなくなるほど疲弊しきっていました。

休職した後も、離れず依頼してくれるクライアントがナナイさんの支え(撮影:川本 史織)

「自分を安売りしないようにと思うけど、仕事の単価を高くするとプレッシャーも増えるし、結局安売りしちゃったり……」

自由な分、バランスをとるのも難しいフリーライター業ですが、過労で休職した後も離れずに、今でも仕事を依頼してくれるクライアントがいるのが、金銭的にも、精神的にも結局ナナイさんの支えになっています。

今は毎月固定で決まっている原稿を執筆しながら、単発の原稿依頼も受けていますが、生計を立てるためにはキャバクラの仕事がまだ辞められなさそうです。

お客さんは優しいけれど、毎晩のメイクやドレスやハイヒールが、ナナイさんの体力気力を少しずつ削っています。

「次から次へと取引先が業務縮小でなくなっていくんです。営業下手な私では、このままでは食っていけなくなるな……と、なんか疫病神がついているのかもしれないです。業界の景気は悪くなる一方ですよ」

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