大恐慌のような経済危機では必ず「デフレ」という現象が伴う。
『大恐慌』(ベルナール・ガジエ著、白水社)によると、1929年と1933年の4年間の卸売物価を見てみると、わずか4年で物価は4割も下落している。下記のカッコ内は、1929年から32年までの消費者物価指数。
・フランス……マイナス38%(マイナス29%、1929~33年)
・イタリア……マイナス37%(マイナス21%)
・ドイツ……マイナス34%(マイナス21%)
・イギリス……マイナス32%(マイナス14%)
前述したように、アメリカの国民総生産(GDP)は1929年の1044億ドルから560億ドル(1933年)にまで縮小。4割超の物価の下落はGDPも半減させたということだ。ちなみに、大恐慌の影響をあまり受けなかった日本でも、消費者物価指数は同条件でマイナス17%という記録が残っている。
1930年代の大恐慌では、アメリカの悲惨な例が注目されるが、実はブラジルのコーヒー農園ではアメリカ向けのコーヒー豆が売れなくなり、過剰在庫として石炭と一緒に燃料として燃やされたという記録が残っている。
実際に、大恐慌時代は世界各国が「保護貿易」に走り、とりわけアメリカでは高い関税をかけて海外からの輸入を規制した。75カ国の月ごとの輸入を合計した数値を「らせん状」に並べたグラフは、大恐慌を象徴するものとして知られている。各年1月時点の75カ国の「輸入額」は次のような推移をたどって、5年で3分の1に減少した(『大恐慌』より)。
・1930年……2.739
・1931年……1.839
・1932年……1.206
・1933年……0.992(単位:10億ドル)
「輸出」で見ると、そのすさまじさがわかる。1928~1929年から1932~1933年までに、輸出が大きく減少した国は次のようになっている(『大恐慌』より)。
・80%以上……チリ
・75~80%……中国
・70~85%……ボリビア、キューバ、マレーシア、ペルー、エルサルバドル
1929年の大恐慌では株価はざっと9割下落している。まさに、紙くず同然になった株式も少なくなかったわけだ。投資家が数多く入居していた当時のエンパイアステートビルでは、毎日のように破産した投資家がビルから身投げをしたという記録も残っている。歴代の株価暴落を紹介すると、次のようになる。
日本の平成バブル崩壊も株価は8割下げた
■FT100(1974年)……86.5%
■日経225(1990~2003年)……81.5%
ちなみに、代表的な株価指数ではないが、日本の「東証マザーズ」では有名な「ライブドア・ショック」時に、最大で90.86%(2006年1月31日~2008年10月31日)の下げ幅になった。新興企業の大半が壊滅的な株価下落を経験している。
新型コロナウイルスの感染拡大による現象で「オーバーシュート」という言葉が話題になっているが、株式市場でもオーバーシュートという言葉がよく使われる。売られすぎ、買われすぎを示す言葉だが、時として金融市場の価格はドラスティックな動きになる。加えて、変動幅が増幅される現在のAI(人工知能)相場では、さらに大きな変動もありうる。想定を超えるボラティリティー(変動幅)があっても不思議ではない。
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