著書『富国と強兵』で、ポスト・グローバル化へ向かう政治・経済・軍事を縦横無尽に読み解いた中野剛志氏が論じる。
「新型コロナ」以前から世界経済は後退局面
大和総研が3月6日に発表した試算よると、新型コロナウイルスの流行が仮に4月までであった場合でも、実質GDP(国内総生産)は0.8%のマイナスとなる。
しかし、感染の影響が今年2月から1年程度継続するとした場合、個人消費は約12兆1000億円抑制され、実質GDP(国内総生産)は16兆3000億円減少して、マイナス3.1%になる。これは、2008年のリーマン・ショックによるマイナス3.4%に匹敵する規模である(「新型肺炎拡大による日本経済への影響度試算」)。
これでもまだ、WHO(世界保健機関)がパンデミックを宣言する以前の試算にすぎないのである。
そもそも、新型コロナウイルスが発生する前から、世界経済は後退局面にあった。
IMF(国際通貨基金)の世界経済見通しによれば、2019年の世界経済の成長率は、推計2.9%(世界経済見通し2020年1月改訂)である。これは、2017年に3.8%だったのと比較すると著しく低いだけでなく、世界金融危機以降で最も低い水準である。とくに、中国をはじめとする新興国経済の成長鈍化が顕著であった。
もちろん、日本経済も景気後退局面に入っていた。それにもかかわらず、昨年10月に消費税率が2%引き上げられたのである。その当然の結果として、2019年10~12月期の実質GDPは、前期比マイナス1.8%、年率換算でマイナス7.1%と激しい落ち込みを見せ、とりわけ、個人消費と設備投資の減少が著しかった。
2014年に消費税率が引き上げられた際も、同様の落ち込みはあったが、それでも当時の世界経済は好調であり、日本経済は外需によって多少なりとも救われた。
また、2008年のリーマン・ショックの時は、その前年まで、世界経済は好調であり、それに伴って日本経済もやはり好調な外需に支えられていた。
他方、1997年の消費税増税の際は、その直後にアジア通貨危機が勃発したため、日本経済は危機的な状況に陥り、金融危機が招来された。
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