新型コロナで焦るトランプ大統領の危険な賭け 民主党バイデン氏は共和党の対策を毎日攻撃

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4月中旬には経済活動を再開したいとするトランプ大統領(写真:ロイター/JONATHAN ERNST)

首都ワシントンはゴーストタウンと化した。3月半ばから桜が咲き始め、例年、この時期は多くの花見客が訪れる。だが、3月22日、ムリエル・バウザー市長は桜の名所を一部封鎖し、今年の花見は見送るよう懇願し、25日には必要不可欠な事業も市長令で閉鎖した。子供の学校の授業や誕生日パーティーまでバーチャルに切り替わり、市民生活は激変した。

すでに全米で6万9000人を超える新型コロナウイルスの感染者が出て、死者も1000人を超えた。外出自粛あるいは一部の州では外出禁止の生活が全米でニューノーマルとなりつつある。11月のアメリカ大統領選へ向けて、数週間前までは再選がほぼ確実視されていたトランプ大統領だが、雲行きは怪しくなってきた。

歴史的に不況下の再選はほぼ失敗

新型コロナによる不況は避けがたい。経済成長と公衆衛生問題の解決はトレードオフの関係にある。感染拡大を防ぐためには他人との距離を保つ「社会的距離(social distancing)」が不可欠だ。だが、社会的距離の徹底は、人々の交流が前提となっている経済が犠牲にならざるをえない。

ケビン・ハセット前大統領経済諮問委員会(CEA)委員長は、仮に今後半年間、国民が外出しない状況が続けば「大恐慌のようになりかねない」と警鐘を鳴らした。トランプ氏は幸運にも、これまで戦争勃発や経済危機など政権運営が試される大規模な危機に直面したことはなかったが、ついに政権発足以来の最大のピンチに陥った。

任期1期目後半に不景気を経験した大統領で再選を果たしたのは、南北戦争以降では1900年大統領選で再選したウィリアム・マッキンリー大統領のみだ。それ以降、不景気の中、再選を目指したウィリアム・タフト大統領、ハーバート・フーバー大統領、ジミー・カーター大統領、ジョージ・H.W.ブッシュ大統領(ブッシュ父)はいずれも落選している。

現時点では景気はV字回復を遂げるのか、より回復に時間を要するU字回復となるのか、あるいは低迷を続けるL字(ホッケースティック)回復となるのか不透明だ。いずれにしても、突然、止まった経済活動は、公衆衛生問題がある程度、解消するまでは復帰の道筋はない。もちろん、公衆衛生問題は政策金利引き下げでは解決できない。

近年の2極化社会の中で景気と再選の相関関係は低下しているとの分析もあるが、これまでの歴史が繰り返されれば、選挙直前に不景気入りに直面するトランプ氏の再選は危うい。

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