まずは会社の知名度を引き上げていきたい 眞保智絵・野村信託銀行次期社長に聞く

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野村信託銀行社長に4月1日付で就任する。わが国初の女性銀行トップとなる。政府が女性の積極活用を推し進める中での出来事だ。時代のフロントランナーとして注目を浴びているが、その心境は?

 

しんぽ・ちえ 1965年生まれ。フェリス女学院高校卒。早稲田大学法学部、米国スタンフォード大学経営大学院卒。野村ホールディングス、野村証券で経営企画担当執行役員などを務め、2014年4月1日に野村信託銀行社長に。

──話題の人になっていますね。

これほど注目されるとは思いませんでした。野村には男、女ということにあまりこだわらない風土があります。入社して最初に配属された部門は5人のトレーダーのうち3人が女性で、男性に交じって働いていました。

鈍かったからなのか、これまでいわゆるガラスの天井を感じたこともなかった。面白くない答えでしょうが、「世の中からは、女性が社長に選ばれるのは特別なことと見られているのだな」というのが、感想です。

──「女性登用」という言葉がことさら使われること自体、現実にはそうなっていない証しでもあります。

そのとおり。個人的には、クオータ制のように男女の比率を何%とあらかじめ目標化することは疑問に思っています。そうしないと動かないのであれば、時限的に必要な施策なのかもしれませんが、男女を分けて考えることはあまり意味がない。

それから、よく「目標としている女性経営者は?」と聞かれるのですが、特別に意識している女性経営者はいません。女性の場合、人生の選択肢が広くて、場面ごとにいろいろなものを選んでいかなければならない。特に、結婚相手がどのような人なのかに大きく左右されるので、単純なものではない。いいとこ取りのような考え方がちょうどいいのかもしれません。

──信託銀行の社長としての抱負は。

野村グループの中に銀行があるということ自体、あまり一般の人には知られていないと思っているので、まずは存在を広く知っていただきたい。その意味では、今回、私のことが話題にされて、それを機会に野村信託銀行の名前が世の中でさらに認知してもらえればいいのかな、と。

野村信託銀行は昨年、創業20周年を迎えました。今は銀行業務と財産管理業務が柱です。財産管理のメインは投資信託資産の受託。ここは基幹業務として信頼されるオペレーション能力を培ってきたという自負があります。これまでと同様、野村証券の法人顧客が求めている信託関連のサービスをきちんと提供できる銀行でありたい。

──近年、信託銀行には受託者責任原則の一段の徹底が求められています。

要求されるレベルが格段に高くなっていることは認識しています。強化しなければならないところは、私も見ていかなければならない。そこは課題だと思っています。

週刊東洋経済2014年3月29日号〈24日発売〉、「この人に聞く」より)

浪川 攻 金融ジャーナリスト

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なみかわ おさむ / Osamu Namikawa

1955年、東京都生まれ。上智大学卒業後、電機メーカー勤務を経て記者となる。金融専門誌、証券業界紙を経験し、1987年、株式会社きんざいに入社。『週刊金融財政事情』編集部でデスクを務める。1996年に退社後、金融分野を中心に取材・執筆。月刊誌『Voice』の編集・記者、1998年に東洋経済新報社と記者契約を結び、2016年にフリー。著書に『金融自壊――歴史は繰り返すのか』『前川春雄『奴雁』の哲学』(東洋経済新報社)、『銀行員は生き残れるのか』(悟空出版)などがある。

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