世界経済危機で経営者が犯しやすい10の過ち コトラーが教える「乱気流」時のマネジメント
配送が遅れる、銀行が融資をやめて返済を迫るようになる、企業が従業員を解雇する、こうして、経済が急降下し始める。すると企業は、さらに慎重な判断を下すようになる。新製品開発を保留にし、マーケティングと広告の予算を削減する。用心深いあまり、当面の生き残りのみを考えて縮小化を行い、長期といえば投資回収を命じるくらいである。
乱気流はつねに、リスクと不確実性が高まることを意味する。リスクという言葉は、数値予測ができ、保険をかけることができる不確実性を表すのに用いられる。しかし、企業が直面するものには、保険をかけられないリスク、まったくの不透明さがつねに存在する。企業は、高い不確実性をものともせず収益を最大化しようとするよりも、リスクを最小限にすることで、万が一最悪の事態が起こってもなんとか生き残れるような決断をするだろう。
乱気流時代に犯しやすい過ち
乱気流が引き起こす不確実性について、唯一確実にいえることは、それが長引くにつれて人がより慎重になるということである。顧客が望んでいることを予測できなくなると、企業は自社のコアとなる基本方針を手放しがちである。
そうなると、乱気流は非常に危険な相乗効果を生む。最も健全で信頼性のある企業でさえ、その安定した基盤が根底から覆され、一方そのトップも、健全な判断が下せなくなってしまうのである。
経済恐慌が広がって頂点に達すると、多くの企業が方針を変える。見当違いの費用削減ばかり行う。有能な人材を解雇し、リスクをとるのを嫌がり、技術・製品開発費をカットし、最悪なのは、不安に駆られたままで判断してしまうことである。こうしたことは、企業にとって障害となるばかりか、破壊にすらつながりかねない。
出入り口をしっかり閉めて備えることがだけが、嵐を、それも予想できる嵐だけだが、乗り越える手段ではないし、企業の利益を真っ先に考えたものとも限らない。はっきりいってしまうと、ビジネス界に乱気流が生じると、大抵の企業が次のような誤った対応ばかりするようになるのだ。
・計画的行動ではなく、全社一律の経費削減をする過ち
・目先のキャッシュのために人材を使い捨てにする過ち
・マーケティング、ブランド、新製品開発の各経費を削減する過ち
・売上減少を挽回するために値下げする過ち
・販売関連費を削減することで自ら顧客から離れていく過ち
・社員研修や能力開発費を削減する過ち
・仕入先や販売業者を軽視する過ち
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