世界経済危機で経営者が犯しやすい10の過ち コトラーが教える「乱気流」時のマネジメント
2008年にアメリカの金融破綻が突然発生したとき、わたしたちはクライアントや友人にこう尋ねられた。「どのくらい深刻なのか。どの程度続くのか」。
誰もが知りたがったのは、これが一時的な不景気なのか、深刻な景気後退なのか、それとも大不況なのかということだった。これと同じことを2008年10月に聞かれて、ノーベル賞受賞経験のある経済学者ゲーリー・ベッカーはこう答えている。
「誰にもわかりません。わたしにわからないのは確かです」。その真意は、知ったかぶりをする経済学者のいうことを信用してはいけないということである。
いま、乱気流という新たな時代に入っていることは事実である。それも、強度の乱気流である。ある時には9・11のようなテロが、またある時にはハリケーン・カトリーナのような大水害が発生する。サブプライムローンと不良債権が世界金融危機を引き起こすこともあるのだ。
今日、予想外の大きな衝撃が以前より高い頻度で起こるのは、経済や情報の巨大な流れを支えているグローバルエコノミーの相互関連性が高まった結果である。
予測不能の乱気流が常態化した時代
世界は新たな経済ステージに突入した。各国の経済は互いに密接に関わり合っている。商業活動は、インターネットや携帯電話を通じて瞬時にやりとりされる情報に基づいて行われている。
この新たな経済ステージが、コストダウンや、製造・商品配送・各種サービスのスピードアップといった、すばらしい効果をもたらしている。しかし、これにはマイナス面もあり、リスクと不確実性の度合いがかなり高まるという事態に、企業と消費者は直面している。
一国のある出来事や変化──銀行破綻・株式市場や不動産の暴落・政治家の暗殺・通貨暴落のいずれであれ──がほかの多くの国々に広がって、予期せぬ大きな乱気流を引き起こしかねない。経済のしくみ全体が渦に巻き込まれて、まったく思いがけない結果が生じるのである。
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