「下方修正」続出、キーワードで探るコロナ影響 「会社四季報」春号で判明した650社超の内実
さらにヒット商品の生産が一時停止となった企業もある。
ソースネクストは累計出荷台数が70万台を超えるヒット商品となっている翻訳機「ポケトーク」を生産する深圳工場が一時停止。国内向けの商品在庫が一時的に不足する懸念も出てきている。
中国への進出が進んでいる企業では、現地店舗の休業なども痛手となった。低価格イタリアンのサイゼリヤは、上海や広州、北京に展開する300店超の店舗が一時休業。「無印良品」の良品計画や「ユニクロ」のファーストリテイリングでは、中国の複数店舗が営業を休止した。大型温浴施設を運営する極楽湯ホールディングスは、繁忙期となる春節の大型連休期間に武漢や上海の直営店とフランチャイズ店など、中国で展開している全店舗を臨時休業した。
内需系の企業で幅広い影響が出ているのも見逃せない。大きいのはインバウンド(訪日観光客)需要の縮小だ。中古ブランド品で業界首位のコメ兵は、2月以降の訪日客減少が直撃。想定以上の消費増税反動減とあわせて、2020年3月期の営業利益見込みを13億円から3億円に下方修正した。訪日客の減少は、ホテルチェーンや百貨店、ドラッグストアなどでの化粧品販売などにも影響している。
さらには、国内での感染拡大対策のための政府による自粛要請も、多くの内需企業に影響を及ぼしている。東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドは2月下旬から4月上旬までの休園を実施。多くの来場者が訪れる春休みシーズンが含まれるにもかかわらず、感染拡大の防止のために長期間の休業を決断した。冒頭のエイチ・アイ・エスやKNTーCTホールディングス、航空会社のANAホールディングスや日本航空、JR各社など旅行関連の業界でも、どこまで客数に影響が出るのか、見通しづらい。
スポーツジムやエンタメは客足が減る一方
初期のころ、一部の高齢の感染者が広がったスポーツジムも、客足に懸念がある。セントラルスポーツやルネサンス、3月2日に新規上場したばかりの女性向けフィットネスのカーブスホールディングスといったスポーツジムでは、感染予防のために店舗の休業や一部サービスの停止などの対策を実施。休業の影響のほか、自粛ムードが長引けば、入会者を多く獲得できる春シーズンにおける入会が鈍る可能性もある。
エンタメ系も自粛ムードが響く。2019年は『天気の子』や『名探偵コナン 紺青の拳』『アナと雪の女王2』といった大ヒット作が続出するなど、好況に沸いた東宝、東映、松竹などの映画会社にとっても、春休みに予定されていた定番人気アニメ作品の上映が延期されるなど、2020年の序盤は映画館への動員が鈍く厳しい状況となっている。
音楽ライブなど大型イベントの相次ぐ中止は、Perfumeや福山雅治といった人気ミュージシャンを抱えるアミューズ、野球やコンサートのイベント会場となる東京ドーム、チケット販売のぴあ、PR会社のサニーサイドアップ、コンサートの音響設備を提供するヒビノをはじめ、多方面に影響が広がりそうだ。
こう考えると、製造業ではかねて米中貿易摩擦、内需系企業では暖冬や増税の反動といった減速要因があったことに加え、予想もしなかった新型コロナウイルスの感染拡大がさらなる打撃となり、株式市場にとっていい材料はなかなか見当たらない。
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