がんと診断された私が生きるためにやったこと 広浜千絵氏(フリーランスライター)に聞く

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──ほかの医者の門もたたくべきだということですね。

別の病院で、当初の医者の見立てが正しくて、当初の病院でもいいと言われたら安心材料になる。また、違う治療法の医者に話を聞くのもいい。そうすれば比較対照して自分にとって何がいいのかがわかってくる。医者と患者は人間同士なので相性もある。会ったときに正直に話がしたくなる医者と、何となく言えないような圧迫感を感じる医者がいるとすれば、治療を頑張れる前者の医者がいいに決まっている。

がんを告知されたとき、患者は焦って早期の治療に走りがちだ。そこで1軒目の病院の言われるがままになる傾きがあるが、とにかく1回はブレーキを踏む。手術してしまった後にほかの治療でもいいと知っても、切った臓器は返ってこない。一生後悔することになりかねない。自分が納得するためにセカンドオピニオン、サードオピニオンは大事なことだと思う。無料の対がん協会や健康保険適用の都立病院もある。

──心の平静を保つうえで、気構えは大事なわけですね。

最近、特にマスコミ全般にいえることだが、「がんを克服する」「がんは完治する」といった言葉が氾濫している。医者でも平気で言う人が増えている。これはまやかしだ。

治療が終わったら、がんという文字自体見たくないという人がいる。そういう人たちに共通しているのは、克服や完治にこだわる点だ。その人たちの再発時のショックや落ち込み方は尋常ではない。いつか再発するかもしれない。体の中にがん細胞が散らばっているかもしれないが、悪さをしないようになだめながら生きていく、と割り切ったほうが楽ではないか。それががんと共に生きるという考え方だ。

『がんと診断された私が生きるためにやったこと』
角川SSC新書 780円+税 206ページ

ひろはま・ちえ
1962年生まれ。血縁者に膵臓がん、悪性リンパ腫、肝臓がん、大腸がん患者がいる。出版社、広告制作会社を経て、29歳で独立。35歳のときに胃がんを宣告され、胃の4分の3を切除。43歳で乳がんの告知を受け、乳房温存手術の後、放射線治療とホルモン療法を経験。昨年大腸ポリープ摘出手術を受けた。

塚田 紀史 東洋経済 記者

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つかだ のりふみ / Norifumi Tsukada

電気機器、金属製品などの業界を担当

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