道路独裁 官僚支配はどこまで続くか 星野眞三雄著 ~「政と官」を考える際の重要な手がかりを与える

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 このように改革が不完全なものとなってしまった背景には、もちろん国土交通省と道路関係議員の抵抗がある。道路公団民営化推進委員会の発足から法案作成に至る過程で国交省がとった作戦は、論点を巧妙にすり替え、都合の悪い決定を先送りし、非公式・非公開の場での調整によって決着を図るというものであり、結果は国交省の独り勝ちであった。不採算路線の建設を続けるためのスキームは見事に温存されたのである。

国が集めた税金を、公共事業や補助金の形で地方に分配することが「自民党的なシステム」の根幹であるとすれば、「道路」はその象徴といえる。となれば、自民党的な「古い政治」との訣別と「脱官僚依存」を掲げて発足した鳩山内閣にとって、道路整備の見直しは特別な意味を持つものということになる。もっとも、道路の建設をめぐる政官業の構造は強固であり、「民主党にも道路族がいる」から、油断をすると鳩山内閣も「古い政治」に逆戻りということになりかねない。本書は「政と官」の今後を考えるうえでも興味深い一冊となっている。

ほしの・まさお
朝日新聞社経済グループ記者。1971年生まれ。早稲田大学卒業後、朝日新聞社入社。2002年から東京本社経済部。国土交通省、建設・不動産業界、日本銀行、金融業界、金融庁、財界、経済産業省などを担当。06~07年に米スタンフォード大学客員研究員。

講談社 1995円 295ページ

  

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