老舗みりん屋の店主がラーメン屋を始めたワケ 経営危機を救ったのは「ツイッター」だった

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100年以上みりんの醸造を手がける「糀富」4代目店主の石黒靖浩さんはどのようにして経営難を乗り越えたのか(筆者撮影)

岡崎市の八丁味噌や半田市の酢など愛知県は醸造業が盛ん。名古屋港にほど近い名古屋市中川区戸田界隈もかつてはみりん蔵や醤油蔵があったという。しかし、時代とともに減少の一途を辿り、現在はたった1軒となった。それが100年以上にわたってみりんの醸造を手がける「糀富(はなとみ)」である。

「私が子供の頃にはまだ4、5軒はありましたが、5年ほど前にはウチだけになりました。平成元年に火事でみりん蔵が焼けてしまい、廃業を考えましたが、長年付き合いのある取引先やお客さんから何とか続けてほしいと言われて、細々と続けてきました」

そう話すのは、4代目の店主、石黒靖浩さん(45歳)。20歳から家業を手伝っていたが、先代である父親とぶつかり、30代の頃は焼肉店やファミリーレストラン、弁当店など飲食店で働いた。それでも曾祖父の代から永年守り続けてきたみりんのことがいつも心のどこかにあった。

「みりん風調味料」とはまったく別物

「煮物に使うイメージの強いみりんの活用法を模索していました。やっぱり家のことが気になっていたんですよね。3、4年ほど前、休みの日に店の仕事を手伝ったとき、なんか自分の中でしっくりとくるものがあったんですよ。それで店を継ぐ決心をしました」

みりんは「戸田本みりん」というブランドで販売している(筆者撮影)

昔ながらの製法で作られたみりんは深いコクがあり、スーパーに並ぶみりん風調味料とはまったくの別物。素朴な甘みとまろやかな口当たりは煮物のみならず、パンケーキやシフォンケーキのシロップとして使用するユーザーもいるという。

さらに、石黒さんは店を継ぐと、みりんを販売する傍ら金・土・日曜日の昼と夜各10杯ずつの限定でラーメン店「富田屋」を開店させた。あまり宣伝もせず、近所の人が食べに来るくらいの、まさに知る人ぞ知る店だった。それでも飲食店で働いていた経験が生かせたことにやりがいと喜びを感じていた。

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