老舗みりん屋の店主がラーメン屋を始めたワケ 経営危機を救ったのは「ツイッター」だった

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「今のラーメンは、実は失敗から生まれたんです。鶏ガラを煮込む時間を間違えてスープが煮詰まってしまったんです。捨てるのももったいないと思って、作って食べてみたらおいしかったんです。それで鶏白湯にしようと。タレには地元産のたまり醤油とウチのみりんを使っています。その比率、いわば黄金比を算出するのに苦労しましたね」

「お母さんの小鉢」と「みりんのハイボール」。アルコール分を飛ばしたみりんを使った「みりんのジェラート」(右奥250円)も人気だ(筆者撮影)

夜の営業では、サイドメニューとして小鉢入りのお惣菜(250円~)も用意している。石黒さんの母親が作ったもので「お母さんの小鉢」と呼ばれる、店のもう1つの名物だ。豚の角煮やロールキャベツ、筑前煮など煮物が中心で、もちろんそれらにはみりんを使っている。奥行きのある味わいやまろやかな口当たりは巷の煮物とはひと味もふた味も違う。

また、みりんをソーダ水で割った「みりんのハイボール」(450円)も好評。みりんが飲めることは知っていたが、実際に味わってみると、素朴でやさしい甘みが広がる。飲みやすいので、つい、グイグイと飲んでしまう。これもまたみりん蔵ならではの逸品だ。

アンテナショップとしての役割も

店内には1年、3年、5年と熟成期間が異なるみりんが並ぶ。ラーメンを食べに来た約8割の客が買って帰るというから、アンテナショップとしての役割も果たしている。

名古屋市中川区戸田のラーメン屋「富田屋」(筆者撮影)

「まだまだ食べていくのがやっとの状態ですが、多くの方々に支えられていることに感謝しています。47都道府県に1軒ずつでもよいのでウチのみりんを扱っていただけるように、これからも手間を惜しまず、おいしいみりんとラーメンを作り続けていきます」

平日はみりんの瓶詰めや配達の仕事をこなしながら週末はラーメンの仕込みと調理、接客と石黒さんは休む間もないほど大忙しだが、その表情は清々しい。必ず報われるときが来るだろう。

永谷 正樹 フードライター、フォトグラファー

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ながや まさき / Masaki Nagaya

名古屋を拠点に活動するフードライター兼フォトグラファー。

地元目線による名古屋の食文化を全国発信することをライフワークとして、グルメ情報誌や月刊誌、週刊誌などに記事と写真を提供。

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