この円高と株安の同時進行はいつまで続くのか アメリカとの金利差縮小で円高が急激に進行

✎ 1〜 ✎ 4 ✎ 5 ✎ 6 ✎ 最新
拡大
縮小

円高が進行している分だけ、日本株はアメリカ株以上に値を下げている。アメリカ株が下げ止まらないと、円高も止まらない。それが円高と株安が同時進行につながっている。

円高が進めば株安はこの水準で済まない(撮影:尾形文繁)

さらに、ここに来て劇的な下げを見せているのが、原油価格だ。WTI原油先物は3月9日の午後(日本時間)で一時1バレル=27ドル台まで3割以上の暴落となり、2016年2月以来の安値を付けた。

世界的な景気失速によって原油需要の減退が予想される中、「OPECプラス」の協調減産協議の決裂やサウジアラビアの原油大幅増産計画などが嫌気されたものだ。

 市場内では、原油価格の急落に伴い、サウジ政府系ファンドなどのオイルマネーが世界の株式市場から資金を引き揚げるのではないかとの観測が浮上。また、中国経済の停滞が懸念された2015~2016年のチャイナショック時と同様、原油急落から、米国のシェールオイル関連などハイイールド債発行企業の信用不安につながるとの懸念も強まっている。チャイナショックが起きた当時、ドル円相場は一時、1ドル100円を割る水準まで進んでいる。

1ドル90円近辺の円高も

今後の為替市場の見通しについて、楽天証券経済研究所グローバルマクロ・アドバイザーで田中泰輔リサーチ代表の田中泰輔氏は、「新型コロナの感染拡大収束のタイミング次第だが、短期収束の可能性が高まれば、ドルショート(ドルの売り持ち)の巻き戻しで急速に円安に転じる。だが、向こう2~4週間でも収束のメドが立たなければ、すでに長期拡大の終盤を迎えつつあるアメリカ経済の景気後退が現実味を増し、1ドル90円近辺への円高も覚悟すべきだ」と話す。

東洋経済解説部のコラムニスト7人がそれぞれの専門的な立場からお届けする、ニュースの「次」を読むための経済コラム。画像をクリックすると一覧にジャンプします

1ドル100円を割ってくれば、日本銀行も何らかの対応を迫られる見通しだが、マイナス金利の深掘りには低迷する銀行収益を直撃するなど副作用も多く、「円高を食い止める対応には限界がある」(田中氏)。1ドル90円台となると、輸出企業を中心に業績下方修正の懸念が一段と強まり、株価下落に一段と拍車がかかる可能性がある。日本の本格的な景気後退は避けられないだろう。

今後、新型コロナの感染拡大のデータとともに、国内外の景気指標も続々と発表され、世界経済へのダメージが明らかになってくる。そうした数字をマーケットがどう消化し、政策当局がどう対応するか。先行き予断を許さない展開が続く見通しだ。

中村 稔 東洋経済 編集委員
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT