円高が進行している分だけ、日本株はアメリカ株以上に値を下げている。アメリカ株が下げ止まらないと、円高も止まらない。それが円高と株安が同時進行につながっている。
さらに、ここに来て劇的な下げを見せているのが、原油価格だ。WTI原油先物は3月9日の午後(日本時間)で一時1バレル=27ドル台まで3割以上の暴落となり、2016年2月以来の安値を付けた。
世界的な景気失速によって原油需要の減退が予想される中、「OPECプラス」の協調減産協議の決裂やサウジアラビアの原油大幅増産計画などが嫌気されたものだ。
市場内では、原油価格の急落に伴い、サウジ政府系ファンドなどのオイルマネーが世界の株式市場から資金を引き揚げるのではないかとの観測が浮上。また、中国経済の停滞が懸念された2015~2016年のチャイナショック時と同様、原油急落から、米国のシェールオイル関連などハイイールド債発行企業の信用不安につながるとの懸念も強まっている。チャイナショックが起きた当時、ドル円相場は一時、1ドル100円を割る水準まで進んでいる。
1ドル90円近辺の円高も
今後の為替市場の見通しについて、楽天証券経済研究所グローバルマクロ・アドバイザーで田中泰輔リサーチ代表の田中泰輔氏は、「新型コロナの感染拡大収束のタイミング次第だが、短期収束の可能性が高まれば、ドルショート(ドルの売り持ち)の巻き戻しで急速に円安に転じる。だが、向こう2~4週間でも収束のメドが立たなければ、すでに長期拡大の終盤を迎えつつあるアメリカ経済の景気後退が現実味を増し、1ドル90円近辺への円高も覚悟すべきだ」と話す。
1ドル100円を割ってくれば、日本銀行も何らかの対応を迫られる見通しだが、マイナス金利の深掘りには低迷する銀行収益を直撃するなど副作用も多く、「円高を食い止める対応には限界がある」(田中氏)。1ドル90円台となると、輸出企業を中心に業績下方修正の懸念が一段と強まり、株価下落に一段と拍車がかかる可能性がある。日本の本格的な景気後退は避けられないだろう。
今後、新型コロナの感染拡大のデータとともに、国内外の景気指標も続々と発表され、世界経済へのダメージが明らかになってくる。そうした数字をマーケットがどう消化し、政策当局がどう対応するか。先行き予断を許さない展開が続く見通しだ。
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