コロナ欧米拡大で「国際海運」が迎える正念場 コンテナ輸送は停滞、船舶検査の遅延も発生

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日本郵船は「中国向け鉄鉱石・原料炭の荷動きに今のところ大きな変動はない。中国国内の鉄鉱石の埠頭在庫は春節明けに多少積み上がったものの、2月末時点では2019年9月以来の低水準。中国国内の鉄鉱石需要は衰えていない」。ある大手総合商社も「オーストラリアから中国への鉄鉱石輸送に影響は出ていない」という。

もっとも、中国国内で鋼材の製品在庫が積み上がっており、先行きは予断を許さない。「コロナ問題で鋼材需要の減少が長引けば、原料の需要や荷動きに影響が出てくる可能性がある」(日本郵船)。

船員交代や船舶検査へも影響

商船三井は、輸出入の動きを反映する、中国における外航船の1日当たりの寄港回数に着目している。寄港回数は春節時点(1月25日)では2019年の同時期を上回る600回超だったが、2月中旬に550回程度まで減少。2月下旬には2019年並みの約800回まで回復している。港で滞船や荷物が滞留した原因は、「感染拡大の予防措置によるものであり、足元の急回復はその反発によるものと考えられる」(同社)。

船員の交代や船舶の検査への影響も懸念されている。

アメリカやオーストラリアなど多くの国々は、中国から出港した後、14日を経過しなければ船員の下船を認めないという規制を設けた。14日間は、潜伏期間に関するWHOの知見を踏まえたものだが、「船員が中国で下船していなければ入港を許可する場合や、生活必需品を運搬している場合は入港を認められるケースもある」(商船三井)という。

国際条約では、労働者保護の観点から船員の連続乗船期間を最長12カ月とする規制が設けられている。ただ、「コロナウイルス問題が理由で船員を交代できない場合に、免除規定が適用される国・地域は増えている」(ある海運会社)という。

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