コロナ欧米拡大で「国際海運」が迎える正念場 コンテナ輸送は停滞、船舶検査の遅延も発生

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さらに、船舶は5年に1度、造船所のドックに入って定期検査を受ける必要がある。前出の海運会社によれば、「中国国内の造船所は2月10日前後から順次操業を再開しているが、3月上旬時点でも稼働率は5~7割程度。そのため、数週間程度の新造船の竣工遅延や改造・検査が混雑している」という。

同海運会社では、14日間の隔離期間が必要なため、造船の立ち会いとして派遣している建造監督を日本から派遣することを見合わせており、現地駐在の人員で対応している。3月初旬時点では、「改造や検査については、他国の造船所で対応できるものは振り替えており、業務への影響を最小限にとどめる対応ができている」(同社)。

「滞船」めぐり、荷主・海運会社間で紛争

一方、ある日本の中堅海運会社では、3月に予定していた2隻のドック入りが延期になり、早くても6月ごろになりそうだという。日本郵船ではコロナウイルス対応が長引くことを想定し、4月以降に中国でドック入りを予定している船舶について、他国に振り替えることを検討している。

契約をめぐるトラブルも一部で起こっている。国内の中堅海運会社では、中国での貨物の荷揚げが契約の期日内で終わらなかったことにより、荷主との間で紛争が起きている。

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荷役の遅延によって予定よりも長く船を港に停泊させる「滞船」が発生した場合、荷主から海運会社に滞船料が支払われる。だが、今般、コロナウイルス問題を理由とした「フォース・マジュール」(不可抗力)の事案に該当すると、荷主が主張。2月の荷揚げ分について滞船料の支払いを拒否した。金額は大きくないものの、交渉による解決が必要になっている。

ある大手総合商社は、「荷揚げがタイムリーに行われていないため、鉄鋼製品の中国への輸出で一部に遅れが生じている」と話す。

感染拡大が深刻化したイタリアでは、全土で国民の移動を制限する措置を発表。アメリカ・ニューヨーク州も非常事態を宣言。日本は3月9日午前0時、中国および韓国からの入国制限に踏み切った。

世界規模で人の移動が規制され、海運への影響も長期化が想定される。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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大塚 隆史 東洋経済 記者

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おおつか たかふみ / Takafumi Otsuka

広島出身。エネルギー系業界紙で九州の食と酒を堪能後、2018年1月に東洋経済新報社入社。石油企業や商社、外食業界などを担当。現在は会社四季報オンライン編集部に所属。エネルギー、「ビジネスと人権」の取材は継続して行っている。好きなお酒は田中六五、鍋島。

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