聞き上手の「エモいオヤジ」が若者にモテる理由 「共感」で「学び」を掘り起こす「サードドア」

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「エモさ」と「学び」がうまく両立できていると何がいいか。それは、読者の共感センサーを刺激できるところにあります。僕は、人は共感から入らなければ、何かを学ぶことは難しいと考えています。それはマネージメントにおいても言えることです。

井上大輔/ヤフーMS統括本部マーケティング本部長。ニュージーランド航空、ユニリーバ、アウディジャパンなどでデジタル&マスマーケティングのマネージャーを歴任。著書に『たとえる力で人生は変わる』『デジタルマーケティングの実務ガイド』(ともに宣伝会議より刊行)(撮影:尾形文繁)

最近のマネージメント理論では、フィードバックしてはダメだ、とよく言われますよね。

例えば、他部署の営業部のメンバーに反対ばかりされる、という広告部の部下がいたとします。上司としてその部下を「そこをうまくやるのがお前の仕事だろ」と叱るのは論外ですよね。

次に、「君の説明の巧拙うんぬんより、関係性の問題じゃないかな? まずは飲みに行ってみたら?」とアドバイスする。これは一見よさそうです。

でもこれだと、部下にとっては「言われたことをやる」ことになり、「自分ごと」にできません。

そこで、まずは共感してみる。「うん、それはストレスだね」と。そのうえで、「営業の○○さんはどんな表情してた?」「それはなんでだろうね?」などと対話しながら、本人に現状を振り返って考えさせる。

すると本人のほうから、「○○さんにも事情があるかもしれませんね。そもそも関係性の問題なのかもしれません。ちょっと飯でも行って話してみようかな」と思いついたりする。こうして本人に答えを見つけてもらう。その入り口が、共感センサーの刺激なんです。

弱い部分をさらけ出して共感を誘う

『サードドア』も似ています。アレックスは、実は南カリフォルニア大学(USC)の医学部進学課程の学生という大変なエリートなんですよね。僕なんかからすると雲の上の人です。でも、自分が人種的なマイノリティであることや、うまくいかない葛藤など弱い部分をさらけ出しています。

だから読者はアレックスを雲の上の人とは感じず、感情移入して共感することができる。アレックスの物語は、自分の物語でもあるんだと思えるのです。

この本には、「これをすべし、あれをすべし」とアドバイスするようなことも書いていません。共感から入り、自分ごととして考えるように読者は誘導される。だから学びが深いのだと思います。

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