台湾から上陸、低価格3Dプリンタの実力 完成品が、たったの6万9800円。ターゲットは個人用途

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聞き慣れない社名のXYZプリンティングだが、グループ親会社の金宝グループは台湾EMSメーカーで業界3位。世界8カ所でグローバルな開発体制を整え、10万人を超える従業員が働く大手企業だ。OA機器のプリンタ製品だけでも年間1000万台を生産するほか、傘下の仁宝グループでは「コンパル」ブランドでパソコン事業も展開している。

なぜ台湾のEMSメーカーが、3Dプリンタ市場に参入したのか。そこには、EMS最大手の台湾・鴻海精密工業の郭台銘会長の存在が大きく影響している。郭会長の「3Dプリンタは商業用の大量生産に向かない」という発言に対抗心を燃やして、金宝グループの許勝雄会長が3Dプリンタ市場への参入を決断したという。

世界では米国企業の2強体制

2014年1月のCESでも展示。米国では499ドルという値付けだ

調査会社IDCによると、2013年の世界の3Dプリンタ市場規模は、出荷台数6万8000台、金額ベースは10億ドル(1020億円)強となっている。これが17年には出荷台数31万5000台、金額ベースで27億ドルへ急成長すると見込まれている。現在、3Dプリンタの2大メーカーは米国の3Dシステムズとストラタシスだが、彼らの2013年度の売上高は、3Dシステムズが5億1340万ドル(524億円)、ストラタシスは4億8440万ドル(494億円)となっている。

「3Dプリンタ市場は2強体制と言われても、まだ規模は小さい。参入するチャンスはある」(吉井マネージャー)。XYZプリンティングは今後3年間で、世界の販売台数目標100万台と大きな目標を掲げる。台湾、中国、日本での発売に続き、4月は欧州と北米での発表を控えている。Wi-Fi対応の後継機を開発しているほか、中位機種の投入も検討しており、製品群の拡充による需要の拡大を図る。

「3Dプリンタはアーリーアダプター層から普及するだろうが、家庭内でも子どものおもちゃなどを気軽に作ってもらえるようになってほしい」(梁マネージャー)。今後、激しい戦いが繰り広げられそうだ。

前田 佳子 東洋経済 記者

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まえだ よしこ / Yoshiko Maeda

会社四季報センター記者

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