韓国「パラサイト」の聖地を回って見えた真実 アカデミー賞映画の舞台は格差を映していた
クリョンマウルの通りから街のほうを見ると、巨大なマンション群が蜃気楼のように見えたのが印象的だった。
ロケ地になった階段を上ってみる。かなりキツい階段だったし、上り終えても坂は続いている。確かに毎日、この坂を上り下りするのは大変だ。
韓国の日韓交流会で出会った30代の男性は、アヒョンではないが高度が高い場所に住んでいたという。やはり比較的貧しい地域であり、毎日、学校に行くために坂を上り下りしなければならなかったという。
「雪が積もるとみんなソリを作って坂を滑り降りて学校に向かっていました。道路を滑るわけだからケガしてる人も多かったです。ただ腕の骨を折ったくらいでは先生も動揺せず『気をつけろよ』というくらいでした。ある意味、いい時代でしたね(笑)。今なら大問題になると思います。
確かに高低差ある場所に住むのは大変です。でも、体力はつきます。僕の出身地はサッカーの選手をたくさん生み出しています。おそらく小さい頃から坂を上り下りして基礎体力がついたと思います。僕も、スキーや登山が好きで昨日も冬山に登ってきました」
と言って、スマートフォンで雪山に登っている様子を見せてくれた。バリアフリーの観点から言えば、デメリットが多い街だが、わんぱくな子供たちにとってはメリットもあったようだ。
ただしずいぶん身体がなまっている僕にとっては、坂道はなかなか厳しかった。
ついに半地下のアパートにたどり着いた!
えっちらおっちら坂道を上っていると、同行者がビルの1階を指差して、
「これが半地下のアパートですよ」
と言った。
見ると、地面ギリギリのところに小さな窓があった。言われなければ、気づかなかったと思う。
ただ、気づいてしまえば、多くの物件の1階部分には小さな窓があるのがわかった。窓から下の部分は地下室なのだ。
外からは見えない、完全に地下の物件もあるという。このような地下の物件に住むのは、とても閉塞感があるだろう。
半地下物件は朝鮮戦争のときに防空壕として作られたものも多いという。そのような、そもそもは居住用ではない施設を、貧困層に安く貸し出しているという背景がある。
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