韓国「パラサイト」の聖地を回って見えた真実 アカデミー賞映画の舞台は格差を映していた
朝鮮戦争勃発から70年ほど経っている。どの物件も老朽化が著しい。災害に弱いのは火を見るよりも明らかだ。
坂道を下りて路面に出ると、新たに建てられているクリョンマウルと同じく巨大なマンション群が目に入った。
住人は格差社会を感じずにはいられないだろう。
ちょうど昼食時だったので、映画の中で主人公一家が内職でピザの箱を組み立てていたピザ屋に足を運んでみた。
こちらは漢江の南にあるノリャンジン駅の近くにあるお店だ。作中では「ピザ時代」という店名だが、実際には「スカイピザ」だ。
“聖地巡礼”の日本人が訪れた形跡
スカイピザでは映画の舞台になったことを前面に押し出しており、入り口にはポン・ジュノ監督との写真や、映画のワンシーンが飾られていた。
基本的にはデリバリーを中心にしたお店らしく、店内はあまり広くないが満席になっていた。ピザを食べているのは、僕らも含めてすべて外国人だった。
「映画で登場したピザはなんですか?」と聞くと、ポテトピザだと言われたのでそれを注文した大きめのポテトがゴロゴロと入ったおいしいピザだった。
帰りがけに、女性の店員さんから
「日本人のお客さんたくさんいらっしゃいます。よかったら、寄せ書きを書いていってください」
と言われた。寄せ書きを見ると、
「映画を見てきました」
「また来ます!!」
などと日本語で書かれたメッセージも多かった。僕らも同じような文言を書いて後にした。
アカデミー賞を受賞した効果は、てきめんに表れているのだろうと感じた。経済効果も少なからずあるはずだ。嬉しいことずくめだろうと思ったが、ただものごとはそれほど単純ではないことを知ることになる。
日韓の交流会に出て、数人の韓国人の方々と話す機会があった。
「パラサイトはアカデミー賞を取って素晴らしいですね」
と話題をふったのだが、あまり反応はよくなかった。
「ああそうですね……」
くらいのノリの返答だった。映画が好きだという男性もすぐに、
「僕はキム・ギドクの映画が好きなんですよ」
と話をそらした。
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