韓国「パラサイト」の聖地を回って見えた真実 アカデミー賞映画の舞台は格差を映していた

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パルムドールとオスカーを受賞したのだから、自慢されるかと思ったらまったくそんなことはなかった。

もちろん、僕が参加したその会がたまたまテンションの低い人が集まったという可能性はある。ただ、同じく韓国を訪れていた知り合いに話を聞いても

「アカデミー賞受賞で喜んでいるのは日本人だけで、韓国の人たちは冷めていた」

と言っていた。先程、小さい頃高山地域に住んでいると語ってくれた韓国人男性に話を聞くと、

「パラサイトは、韓国の本来なら隠したい恥部を映画のテーマにしました。しかも、コメディにしています。

『韓国の貧困問題をネタにして稼ごうとしている』

『貧困ポルノ作品だ』

とののしる人も少なくありません。僕はアカデミー賞を取って嬉しいと思います。複雑な感情を示す人もいます。

ちなみに僕は韓国と日本のどちらの映画館でも見ました。日本の映画館は値段は高いですが、とてもよかったです」

と語ってくれた。

日本の『万引き家族』に見られた評価と同じか

確かに日本でも映画『万引き家族』(是枝裕和)がカンヌ国際映画祭でパルムドールを獲得したときにも、

「日本のイメージを下げる作品だ」

「犯罪を応援する作品だ」

というような批判が相次いだ。

『パラサイト 半地下の家族』も、確かに単純に褒めることが難しい作品なのかもしれない。

ただそれでも、現実を知ること、理解することは、悪いことではないと思う。

村田 らむ ライター、漫画家、カメラマン、イラストレーター

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むらた らむ / Ramu Murata

1972年生まれ。キャリアは20年超。ホームレスやゴミ屋敷、新興宗教組織、富士の樹海などへの潜入取材を得意としている。著書に『ホームレス大博覧会』(鹿砦社)、『ホームレス大図鑑』(竹書房)など。

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