給食中止「食うに困る子」143万人の切実な事情 ある子ども食堂の「覚悟」と政府の「無策」

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六郷さんも苦悩した。板橋区内の他の子ども食堂の開催中止も耳にし、10名ほどのボランティアスタッフたちと話し合いを続けた。

だがそんなある日、スタッフと中止するかどうか相談していると、話し声を聞いた小学5年生の女の子がやってきて、六郷さんに言った。

「やめられたら行くところ無くなっちゃう」

他にも小学生の兄弟で、朝食や前の晩御飯を抜いてきたと話す子もいた。「もし、子ども食堂を休めば餓死する子どもが出るのではないか」。

六郷さんは、「腹を括ろう」と子ども食堂を続けることを決めた。

もちろん、感染防止の対策もしっかりとする。外から入ってきた人の手洗いうがいや、ドアやテーブルなど子どもが触る箇所のアルコール消毒といった基本的なことを徹底している。

文科省「具体的な対策は決まってない」

子ども食堂を中止する団体にも、給食がなくなることを心配して対策を取るところはある。寄付者から集まった野菜やお米などの食材、お菓子を配布したり、調理済みのお弁当を配る宅食で支援を続ける。

民間が子どもの食を守ろうと四苦八苦している中、政府は何か対策を練っているのだろうか。文科省健康教育・食育課に聞いた。

担当者は「休校となった以上、今の学校給食という形式は取れません。今後政府が検討する可能性はありますが、現段階では具体的な対策はまだ決まっていません」と回答した。

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2012年にスタートし、子ども食堂の先駆けとなった大田区の「気まぐれ八百屋 だんだん」では、子ども食堂を休む代わりに食材の配布を決めた。代表の近藤博子さんは言う。

「できることはやろうと考えているが、付け焼き刃の支援になっても仕方がない。本来は学校休止を言い出した行政が、こうなることを予想して対応すべきだ」

辻 麻梨子 ジャーナリスト

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つじ・まりこ / Mariko Tsuji

1996年生まれ。早稲田大学卒。非営利の報道機関「Tansa」で活動。現在はネット上で性的な画像が取引される被害についてシリーズ「誰が私を拡散したのか」を執筆している。

 

 

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