「2月28日に夫が出張先の横須賀から帰ってきたのですが、玄関先で2メートル離れたところから全身に除菌スプレーを噴射していました。できることなら空港で14日隔離してほしいくらいです」
長女(15歳)の高校入試を3月10日に控える福岡市の通訳者の裕子さん(仮名、50歳)は、新型コロナウイルスによる肺炎の拡大に気が気ではない。
通訳という職業柄、外国人と接する機会が多い裕子さんは「自分が感染して、娘に迷惑をかけたらどうしよう」と、1月から手洗い、うがいなど対策を徹底していた。だが、自分ではなく夫が2月22日に40度近い高熱を出した。インフルエンザの検査は陰性で自宅で療養することになったが、熱は3日間続いた。
「夫がトイレや水分補給でリビングまで出てきて、自室に戻った後は、彼が触ったと思われる場所を除菌スプレーやアルコールで消毒して回りました。夫は26日に熱が下がり、27日から出張に出たのですが、私は寝具に100回くらい除菌スプレーをまきました。枕カバー、ベッドカバーなどは洗濯、干した後もスプレーをかけました。これほどまで神経質になったのは初めてです」(裕子さん)
学校の休校よりも塾の閉鎖のほうが困る
そんな裕子さんに追い打ちをかけるように、政府は全国の小中高に一斉休校を要請した。学校からも28日に3月2日から休校に入るとの通知が来た。だが、裕子さんは「私も娘も、学校の休み自体はそんなに動揺していません」と話す。学校も入試対策期間に入っているが、裕子さんの娘の心の拠り所は塾だからだ。
通っている塾からは、3月1日までは通常運営し、その後のことは追って決定すると連絡があった。裕子さんは、「今いちばん頼りにしているのは、塾の数学と英語の先生。学校が休みになっても塾の自習室がありますが、塾が閉鎖されたときのことを考えると、恐ろしいです」と話した。
新型コロナウイルスの拡大期と入試が重なり、受験生やその家族、教育関係者は対応に追われている。中学入試が行われた2月初旬にかけても、感染は水面下では広がっていたはずだが、実際の生活にはほとんど制限や影響はなかった。
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