また、ランキング上位ではないが、近年の働き方改革の流れを受けて、急速に取得率を伸ばした企業も出てきている。
日清食品ホールディングスは、2016年度の54.4%から直近は96.6%まで取得率を伸ばしている。同社は1人当たり年間総労働時間2000時間未満を目標に掲げた「スマートワーク2000」を2017年度に開始した。その一環として、部門ごとに残業時間・有給休暇取得日数の目標を設定し、達成した部門の社員には報奨金を支給するなどの取り組みを展開している。
中小企業でも働き方改革が浸透するか
働き方改革の流れもあり、有給休暇取得率は上昇傾向にある。厚生労働省の就労条件総合調査によると、2018年の取得率は全体で52.4%と4年連続で前年を上回った。2020年までに70%という政府目標の達成は困難だが、2014年から一貫して右肩上がりとなっている。本ランキングにおいても、前回は平均取得率が8割以上の企業は68社だったが、今回は91社まで増加している。
ただ、規模別にみると大企業と中小企業の間で取得率には一貫して差がある。例えば、2017年は従業員1000人以上の大企業の取得率が58.4%であるのに対して、30~99人の中小企業は44.3%にとどまっている。直近の調査でも、1000人未満の企業の多くでは有給休暇の半分も消化できていない。中小企業の従業員は日本全体の約70%に及ぶ。日本全体で有給休暇の取得が進むかは、働き方の見直しが中小企業にまで浸透していくかにかかっている。
取得義務化によって、企業にとって社員の有給休暇のマネジメントは、レピュテーションリスクだけでなく、法的リスク管理の1つとなった。今後、多くの関連企業を有する大企業は、サプライチェーン全体で働き方を見直す必要が高まるだろう。また、中小企業では仕事が属人化しやすく、業務の共有や効率化が進みにくい傾向にある。休みやすい環境の整備には、規模の大小を問わず、各社の取り組みやノウハウを共有していく必要があるだろう。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら