日本人は、なぜこんなにも「いちご好き」なのか ホテルやデパ地下などが一斉にイチゴ押し
「新しい品種は多くなっている」と言うのは、農林水産省園芸作物課の岸本英之氏。2014年に品種登録された栃木県の大型イチゴ「スカイベリー」や佐賀県の白い「天使の実」、2015年の新品種、千葉県の濃い紅色の「真紅の美鈴」など、ここ数年は特徴がはっきりした品種の登録が相次ぐ。登録された品種がすべて出回るとは限らないが、日本には約300もイチゴの品種がある。
そうしたイチゴの動向をいち早くテレビで紹介した、2016年3月1日放送の『マツコの知らない世界』も、人気に火をつけたきっかけの1つだろう。
日常使いのイチゴの量は減っている
岸本氏によると、「今、話題になっているのは贈答用のもので、赤、ピンク、白と3色違う色のものを詰め合わせたり、4つ入る段ボール箱にそれぞれ違う品種のものを詰めるといった、売り方をしているところもある。軸が動かないよう専用のプラスチックケースに1個ずつ入れる、プラスチックネットで個包装するものもあります」。
イチゴは全国47都道府県で作られているが、「各県で特徴のあるイチゴを売り出したい、という雰囲気がある」と岸本氏。
新品種登場が相次ぐ背景には、法律改正もありそうだ。1978年に制定された旧種苗法では、品種登録の有効期限は15年だったが、その後の法律改正で長くなり、2005年以降に登録された品種については、25年間も有効期限がある。長く他県に栽培されることがなく、ブランド力の維持が見込めるのである。
一方で、日常使いのイチゴの購入量は減っている。果物は年々買われる量が減ってきており、イチゴも例外ではない。一方で、「加工用が増えていると思います。ケーキやフルーツサンドなど」と同課の土橋勝氏は言う。確かに、横浜赤レンガ倉庫のイベントで売られる商品も、大半はスイーツやドリンクで、イチゴそのままの商品はわずかだ。百貨店などのフェアもイチゴスイーツが対象である。
総務省の家計調査によると、生鮮果物の1人当たりの年間購入数量は、1988年には約36.7キロあったが、2018年には約24.0キロと6割にまで減少。イチゴ購入数量も20年間で約7割に減少して、2018年には1人当たり年間で755グラム、約3パック分しか年間に購入されていない。
皮をむく必要がなく、洗ってそのまま食べられるイチゴすら買われなくなっているのは、ほかの果物と同じく、割高感が大きな要因と思われる。「安売りがあまりなくなっているかもしれません。以前はジャム用に毛が生えた程度のイチゴも売られていましたが、今はずらっときれいに揃っているものが売られています」と岸本氏は言う。確かに小さいイチゴの販売は店頭で目立たなくなった。形が悪いもの、小さいものは、6次産業化が進む今、加工用に回される傾向があるらしい。
その減少を補うのが、ケーキやパフェ、アイスなどのイチゴスイーツというわけだ。創意工夫を凝らしたイチゴスイーツの人気が高まっていることで、イチゴ人気が目立つのかもしれない。
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