日本人は、なぜこんなにも「いちご好き」なのか ホテルやデパ地下などが一斉にイチゴ押し

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ヨコハマストロベリーフェスティバルでは、イチゴバーガーが売られていたが、こういったイチゴの料理・スイーツはどんどん進化している。イチゴ大福やイチゴのフルーツサンドはすっかり定着し、最近はイチゴのピザ、イチゴご飯、イチゴのリキュール、イチゴ入りの茶、イチゴを練り込んだパンなど、さまざまなイチゴ商品が売られている。最近は、果物を入れる料理の人気もあり、飲食店でイチゴを加えたサラダを見かける機会も増えた。フルーツグラタン、スープなどにもイチゴは使える。

そこへ新品種が相次いで登場し、イチゴ好きの心をくすぐった。しかし、新品種が次々と登場するのは、品種開発力だけでなく、イチゴ生産者たちの技術水準が高まっていることも背景にある。

家庭的な果物からグレードアップ

農林水産省が調査した野菜生産出荷統計によれば、1973年のイチゴの作付面積は1万3600ヘクタールで出荷量は17万600トンだった。それが2017年には作付面積が5280ヘクタールに対し、出荷量が15万200トンで、作付面積は4割弱にまで減少しているのに、出荷量は2万トンぐらいしか減っていない。

それは、さまざまな技術革新が行われてきたことにより、栽培期間が長くなったことなどがある。現場のハイテク化も進み、より甘く、より均質な品質へとイチゴは進化してきた。

春になると、家庭で生のイチゴをデザートやおやつに食べる生活から、高級イチゴが贈答に使われ、イチゴ好きがさまざまな品種のイチゴを楽しみ、イチゴスイーツやイチゴ料理を楽しむ時代になっている。

そのままで楽しむより、料理やスイーツに入ったイチゴを食べるのが主流に(撮影:吉濱篤志)

もちろんイチゴは一部のファンだけのものではない。何しろ、好き嫌いでいえば、嫌われることが少ない果物である。ピンクや赤の色も、暖色系の食品に食欲をそそられがちな日本人の心をくすぐる。近年の「映え」ブームもイチゴにはプラスに作用した。ファンのすそ野が広いところも、イチゴの強みである。

最近は、食のトレンドが二極化する傾向にある。ビーン・トゥ・バーのチョコレートのような未知の領域を開拓するトレンドと、固めプリンやチーズケーキのような、なじみのあるものが進化し、再発見されるもの。タピオカもドリンクとしては目新しいものの、あのグニュグニュした食感は、団子などで昔から日本人が親しんできたものでもある。

イチゴはその意味で、昭和の時代から庶民のものとなり、長く愛されてきた果物である。その加工品が充実してバラエティーが増したこと、新しい品種が加わったことは進化と言え、人気が増す条件を満たしている。

そうしたものをまとまって見られる早春のイチゴのイベントは、もしかすると、今や春を告げる風物詩になってきているのかもしれない。その中で、静かにイチゴの進化が進む。これからどんな品種のイチゴやイチゴ加工品が登場するのか、楽しみである。

阿古 真理 作家・生活史研究家

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あこ まり / Mari Aco

1968年兵庫県生まれ。神戸女学院大学文学部卒業。女性の生き方や家族、食、暮らしをテーマに、ルポを執筆。著書に『『平成・令和 食ブーム総ざらい』(集英社インターナショナル)』『日本外食全史』(亜紀書房)『料理に対する「ねばならない」を捨てたら、うつの自分を受け入れられた』(幻冬舎)など。

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