温暖化が地球を冗談じゃなく痛めつける根拠 化石燃料消費の半分以上は1989年以降のことだ

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では、上昇幅が3℃だと、どうなるだろう?

南ヨーロッパでは旱魃が慢性化し、中央アメリカ、カリブ海ではそれぞれ、平均1年7カ月、1年9カ月も続く。アフリカ北部にいたっては期間が5年にもなる
森林火災で焼失する面積は、地中海で2倍、アメリカで6倍以上になる

2100年までの平均気温上昇を2℃未満に抑えることができたとしても、大気中には500ppm、あるいはそれ以上の二酸化炭素が存在したままだ。1600万年前の地球もそうだった。そのころ、海面水位はいまより40メートル高かった。

地球の変化には何千年という時間がかかるものもあり、しかも元に戻ることはない。このまま二酸化炭素の排出増加が止まらなければ、2100年には地球の平均気温は少なくとも3℃、おそらくは4℃以上、上昇すると国連は警鐘を鳴らす。パリ協定で2℃までと定めたのに、2倍以上になるだろう。

日本を含むアジアの大部分が居住不可能

地球の地質時代を探る最近の研究は、いまの気象モデルは2100年までの温暖化を半分程度に過小評価しているかもしれないと示唆する。つまり、気温上昇がIPCC予測のおよそ2倍になりうるということだ。そうなると、パリ協定の排出目標をすべて達成しても、上昇幅は4℃になる。

現実的には、私たちは2100年までに平均気温が4℃以上、上昇する未来に向かって突進中だ。そうなると、アフリカ大陸、オーストラリアとアメリカ、南米のパタゴニアより北、アジアのシベリアより南は、高温と砂漠化、洪水で住めなくなるという予測もある。

平均気温が4℃上昇する世界では、何が起きるのか?

デング熱感染者が、ラテンアメリカだけで800万人になる
地球規模の食料危機が毎年起きる
酷暑関連の死者が全体の9パーセント以上を占めるようになる
河川の氾濫被害がインドで20倍、バングラデシュで30倍、イギリスで60倍に増える
複数の気象災害が1カ所で同時発生することが増え、損害は世界全体で600兆ドルに達する――いま世界に存在する富の2倍以上だ。紛争や戦争も倍増するだろう
『地球に住めなくなる日: 「気候崩壊」の避けられない真実』(NHK出版)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

平均気温が4℃上昇すれば、サハラに残る緑も、熱帯林も灼熱のサバンナに変貌するだろう。

二酸化炭素の排出を大幅に削減しても気温が4~5℃は上がるとなると、地球全体が生命の住めなくなる星になりかねない。

研究者はそれを「ホットハウス・アース」と呼ぶ。

ほかの地域も含めて、生活環境が厳しくなることは間違いない。それが未来の基本路線だ。

たった1世代で気候崩壊が起きようとしているのだから、次の世代でそれを食い止めなくては。次の世代――それは私たちである。

デイビッド・ウォレス・ウェルズ 新アメリカ研究機構ナショナル・フェロー

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David Wallace-Wells

アメリカのシンクタンク〈新アメリカ研究機構〉ナショナル・フェロー。『ニューヨーク・マガジン』副編集長。『パリ・レヴュー』誌元副編集長。2017年7月、気候変動の最悪の予測を明らかにした特集記事「The Uninhabitable Earth」を『ニューヨーク・マガジン』に発表し、同誌史上最高の閲覧数を獲得。2019年、記事と同タイトルの書籍(邦題『地球に住めなくなる日―「気候崩壊」の避けられない真実』NHK出版)を上梓。ニューヨーク・タイムズ、サンデー・タイムズ両紙のベストセラーリストにランクインするなど世界で大反響を呼んだ。「ニューヨーク・タイムズ紙、2019年ベストブック100」選出。ニューヨーク在住。
(写真ⓒBeowulf Sheehan)

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