年金運用の世界ではかなり昔からこの事実はバレていたのだが、個人の運用の世界でも、投資家の理解が進んだことに加えて、特にアメリカではファイナンシャル・アドバイザー経由の投資信託購入が増えていて、アドバイザーが低コストなインデックス・ファンドを選ぶので、アクティブ・ファンドに資金が回りにくくなった。
アドバイザー側には、自分が顧客からフィー(手数料)を取ったうえで、顧客が満足するリターンを提供しなければならないので、投資対象ファンドに高い運用手数料のものを選びにくい事情がある。
年金運用の世界では、一時、ヘッジファンドによる運用が盛んであったが、近年運用成績が振るわないことに加えて、顧客である年金基金の側が、ヘッジファンドが要求する成功報酬手数料が実質的にひどく高いことに気づいたこともあって(やっと気がついたか…)、ビジネスは頭打ちであるように見える。ここでも、仕掛けがバレた。
運用業界にとってESGはどれだけの商売になるのか?
他方、ここ数年、ESG投資(環境・社会性・企業統治に着眼する投資)が盛んに喧伝されており、運用業界としては何とか新しいビジネスの種として育てたいようだ。
しかし、「ESG」の側面を企業評価や議決権行使で検討するのは当たり前のことであり、これで運用会社が追加的手数料をどれだけ稼げるのかは疑問だ。加えて、「ESG」で運用のポートフォリオに直接反映させることは、運用パフォーマンスの改善に繋がらない。よく考えると当然のことなので、この仕掛も遠からずバレるだろう。運用業界にとって「ESG」がどれだけの商売になるか、見通しは明るいとは言えないように思う。
なお、日本の個人投資家の皆さんは、例えば、『日本経済新聞』に載った「ESG関連の日本株投信」と「日本株投信全体」の運用成績比較を見るといい。(「ESG重視で選ぶ投信」2020年1月11日、有料会員限定記事)。
これによると、過去1年、3年、5年、10年のいずれで見ても「ESG関連の日本株投信」が劣っている。おそらく日本経済新聞社はESG投資を盛り上げたいのだろうから、記事の執筆者もデータの扱いに困ったことだろう。
今後、「ESG運用」を標榜するファンドは、市場平均に勝つ時もあろうが、ESG的視点による運用の制約自体はポートフォリオを作成するうえで不利な要因だ。また、ESGによるアクティブ運用、あるいはESG指数に連動するインデックス運用は、市場平均をベンチマークとする場合、共にアクティブ運用だと考えられるが、パッシブ運用との比較では不利になりやすい。まして、運用手数料が高いのならなおさらダメなはずだ。
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