日本の場合、もともとアメリカほどのアクティブ運用の隆盛がなかった。母国の株式市場の運用環境が長らく悪かったことに加えて、運用業界側のビジネス戦略の失敗もあった(ブランドの作り方が下手で「様になっていなかった」のだ)。
その分、個人投資家にも、インデックス運用が直接拡がって行く可能性がある。金融庁が、「つみたてNISA」あるいは2024年から導入する「新NISA」で、手数料の安価なファンドによる積み立て投資を後押ししていることも追い風だ。
投資家にとっては好ましいことだが、運用ビジネスの側には厳しい環境を意味するかも知れない。特にアメリカの状況と比較すると、個人にとっても運用業界にとっても問題なのは、独立した信頼に足るアドバイザーがどれだけ活動できるかだろう。現在も「IFA」(「I」は「独立」の意味)を名乗る業者は相当数登場しているのだが、投資信託などの金融商品の販売手数料に依存する業者が少なくない。商品販売の手数料を収入としていると、運用のアドバイスが最適なものから歪むインセンティブ(誘因)が働くことが問題だ。
また、現在の投資顧問業法の下では、アドバイザーの側でも、投資顧問登録をしないとどの程度までアドバイスできるかが微妙である一方、投資顧問登録をすると供託金(500万円)が必要だったり、法務担当者を置いたり、面倒な事務が発生したりといった制約があって、資産運用アドバイスのビジネスがやりにくい。
独立系の中立なアドバイザーが多数活動する状況を作るためには、現在の助言の投資顧問ライセンスよりも、もっとライトな投資顧問ライセンスの新設が必要だと思う。現在の投資顧問業法に基づく制度は、個人がアドバイザーを気軽に利用できる環境を作るうえで不便だ。
賢い個人はどうすればいいのか?
今回は、主に運用業界の側から資産運用を眺めてみたが、運用ビジネスの動きを見て、個人はどうしたらいいのだろうか。筆者の結論をハッキリ言うと、以下の通りだ。
(1) 良い本を読んで少々考えると、お金の運用くらい自分でできる!ちなみに、リスク資産の運用は内外の株式のインデックス・ファンドに自分で直接投資したらいい。
(2) どうしてもアドバイスが欲しい場合は、十分な知識を持っていて、ビジネス的にクリーンなファイナンシャル・アドバイザーに相談料を払って相談すべきだ。
(3) 運用商品を売っている金融機関に相談するのはいけない。絶対にいけない!
本来、お金の運用はシンプルなのであり、他人を頼るべきものではない(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら