その政治家は、70代の白人男性である。ポピュリストで、しょっちゅう怒っている。集会に行けば大入り満員で、ほかの候補者とは聴衆の熱気がまるで違う。だが党の本流からは程遠いし、過激な公約を唱えているし、チームプレイヤーでもない。正直なところ、党の主流派は彼のことを嫌っている。その草の根人気には敬服するが、こんな大統領候補を担いだら最後、本選挙でボロ負けしてしまうのではないか……。
上記は、2016年大統領選挙におけるドナルド・トランプ候補のことを言っているのではない。2020年大統領選挙におけるバーニー・サンダース候補のことである。御年78歳。誕生日が9月8日なので、大統領選挙の投票日(11月3日)には79歳となっている。日本だったら免許証を取り上げられ、株取引だって制限を受けそうな後期高齢者。しかもこの人、昨年末に心臓発作で入院したこともある。
「ウォール街」はサンダース候補の快進撃に戦々恐々
それでもサンダース上院議員は人気者である。民主党の大統領候補予備選挙では先頭集団に立ち、2月22日土曜日に行われたネバダ州党員集会では全体の4割以上の代議員を獲得した。もはや押しも押されもせぬ民主党のフロントランナーである。
いや、真面目な話、翌営業日の24日月曜日にはNYダウ平均がいきなり約1000ドルも下げて、それは新型コロナウイルスのせいということになっている。しかし何分の1かは、「バーニー・ショック」も含まれていたのではないかと思う。いやしくも自らを「民主社会主義者」と呼ぶ人物が、米国大統領の正式な候補者になろうとしているのだ。
サンダース氏は、公約の目玉として「国民皆保険制」や「学生ローンの免除」、「気候変動対策」などを掲げている。「社会主義者」だからと言って、いきなり生産手段の国営化を目指しているわけではないのである。ただし公約をすべて実現すれば、連邦政府予算はいきなり倍くらいの規模に膨れ上がるだろう。その財源は、富裕層を中心とする大増税ということになっている。このサンダース氏、アンチ・ビジネスの姿勢を全く隠そうとしない。ウォール街が、「サンダース大統領」の可能性に恐れをなすのもわからぬではない。
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