サンダース氏は2016年の大統領予備選挙で、党の大本命、ヒラリー・クリントン候補を相手に最後まで五分の戦いを演じて名を馳せた。しかるに単なる「善戦マン」ではなく、本気で大統領を目指していた。今回の選挙では、すでに昨年2月19日に出馬宣言を行っている。その真剣さは、ユーチューブ上の出馬宣言 を見ればよく分かる。候補者がただ一方的に語るだけ。地味で不器用だけど、とにかく迫力満点のビデオクリップなのである。
バーニー本人は「誠実」でも「親衛隊」は・・・
いわく、トランプ大統領を打倒するためには「前例のない歴史的な草の根選挙」が必要で、全国で活動する100万人規模のボランティア参加を求めると。これはもう「選挙戦」(キャンペーン)ではなく、「運動」(ムーブメント)であろう。そして出馬宣言から24時間以内に、サンダース陣営には22万人の支持者から600万ドルの献金が寄せられたという。割り算すれば、1人平均約27ドル(約3000円)という少額資金だ。支持者の「熱さ」と「厚さ」が思い知らされよう。以来、民主党では一貫して献金額トップをひた走る。
サンダース候補の行くところ、いつも熱狂的なファンがついてくる。演説内容は判で押したように、「格差を是正しなければならない」という30年来の主張。人気の秘訣は「ブレないこと」なので、熱烈な支持者は「いつも同じ話」を聞いて、バーニーの誠実さを確認して満足するのである。
こうした親衛隊は、「バーニー・ブラザーズ」(Bernie Bros.)と呼ばれている。その熱狂ぶりは「トランプ支持者」の左バージョン、いわば鏡に映した姿のようにも見える。何しろ彼らがもっとも嫌っているのは、民主党のエスタブリッシュメント、特にヒラリー・クリントンである。4年前の本選挙ではかなりの部分が棄権に回り、一部はトランプに投票したとさえ言われている。
バーニー親衛隊は、贔屓の引き倒しで他の民主党候補者を攻撃することも辞さない。バーニー本人は、トランプ批判はするけれども、身内を中傷したりはしない。そういう正直さは、政敵も等しく認めるところである。しかしここまで来てしまうと、バーニー以外の候補者が勝つときには、よほどの大差をつけないと党内がまとまらないかもしれない。
かくして民主党内は深刻である。左派のサンダース支持が大きく伸びる一方で、中道派はジョー・バイデン元副大統領(77)、ピート・ブティジェッジ元サウスベンド市長(38)、エイミー・クロブシャー上院議員(59)、さらにマイク・ブルームバーグ元NY市長(78)と票が割れている。敢えて1人に絞るとしたら、無尽蔵の資金力を有するブルームバーグ候補だろうが、その場合は「社会主義者vs.億万長者」の後期高齢者対決となってしまう。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら