日本でウーバーが決して普及しない本質的理由 「日本国家のフェアネス」という危険なメガネ

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山口:だから前近代的・封建主義的なヒエラルキーが強いんですよね。行政側にしてみれば、ヒエラルキーのトップさえ抑えておけばいいので、コントロールが楽。たしかに昔は情報流通のシステムが非常にプアだったので、そこに頼らざるをえなかった面もあります。

しかし、今は情報流通のコストが圧倒的に安くなっているので、もうヒエラルキーに頼る必要はないはず。相互評価のようなシステムがあれば、行政が全体を監視すること自体がナンセンスです。

幻の「日本版エアビー」

尾原:海外で当たり前のように利用するといえば、エアビーアンドビー(以下、エアビー)もそう。こちらは日本にも進出していますが、もともとシリコンバレーのIT企業が生み出したわけではない。アメリカのある場所でカンファレンスが開かれてホテルが足りなくなったとき、民間の空き部屋に泊まれるようにしたのが最初です。

尾原和啓(おばら かずひろ)/1970年生まれ。京都大学大学院工学研究科応用人工知能論講座修了。マッキンゼー・アンド・カンパニーにてキャリアをスタートし、NTTドコモのiモード事業立ち上げ支援、リクルート、サイバード、オプト、グーグル、楽天(執行役員)の事業企画、投資、新規事業などに従事。経済産業省対外通商政策委員、産業総合研究所人工知能センターアドバイザーなどを歴任。著書に、『ITビジネスの原理』(NHK出版)、『どこでも誰とでも働ける』(ダイヤモンド社)、共著に、『アフターデジタル』『ディープテック』(ともに日経BP)などがある(撮影:尾形文繁)

もともとイギリスで簡易的な宿泊施設を「B&B(ベッド&ブレックファースト)」と言いますが、ベッドの代わりにエアーベッドを提供したので「エアビーアンドビー」と。

彼らは当初、ウェブサイトすら作っていませんでした。すべて手作業で処理していたんです。それが今や、世界中で500万室以上を稼働させている。この数は、世界最大のホテルチェーンであるマリオネット・インターナショナルの約3.5倍に相当します。

その結果、僕たちは知らない人のクルマに乗り、知らない人の家に泊まるという経験を簡単にできるようになった。もう前代未聞の時代じゃないでしょうか。

山口:エアビーが生まれたのは2008年ですが、ちょっと面白い話があるんです。はるか以前の1980年代、千葉県の舞浜に東京ディズニーランドができたとき、周辺の宿泊施設は明らかに不足していました。すでに全国から年間2000万人が訪れていて、そのうち6割は地方から。それだけの人数をとても収容しきれなかったんです。

そこでディズニーランドを運営するオリエンタルランドと地域の方が考えたのは、周辺に数多くあった空き部屋を利用すること。地域のコンビニがカギを管理するとか、借り主も貸し主もそれぞれ相手に点数をつけて評価するとか、かなり具体的なところまで話は進んでいたそうです。これ、今日のエアビーとほとんど同じですよね。

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