日本でウーバーが決して普及しない本質的理由

「日本国家のフェアネス」という危険なメガネ

山口:ところが、少し動き始めた段階で旅館業法に抵触するんじゃないかと横槍が入り、ただちに潰されました。本家エアビーに先行する日本版エアビーの芽は、あっさり摘まれたわけです。

「イノベーションが企業の推進力になる」とか「個人の発想が大事」とか「ビジネスには勇気も必要」とか、美しい言葉はいろいろありますが、これだけ規制されれば“学習”しますよね(笑)。

「オピニオン」と「イグジット」が世の中を変える

尾原:残念ながら日本は遅れていて、前時代的な価値観がいまだに優勢だと。では、そこからのパラダイムシフトは可能なのか。僕たちはどうすればいいのか。

現実世界で既得権を持つ人のフェアネスが優先されるなら、ネット上でつながっている者同士て新しいフェアネスを構築するというのが1つ。これは前回話した物理レイヤーと架空レイヤーという2層構造の話ですね。

山口周(やまぐち しゅう)/1970年生まれ。慶応義塾大学文学部哲学科卒業、同大学院文学研究科美学美術史学専攻修士課程修了。電通、ボストン・コンサルティング・グループ等を経て、組織開発・人材育成を専門とするコーン・フェリー・ヘイグループに参画。現在、同社のシニア・クライアント・パートナー。専門はイノベーション、組織開発、人材/リーダーシップ育成。『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』(光文社新書)、『知的戦闘力を高める 独学の技法』『ニュータイプの時代』(ダイヤモンド社)など著書多数(撮影:尾形文繁)

それから『アルゴリズム フェアネス』でも触れていますが、北欧のエストニアのように、政府自体を徹底的にガラス張りにするという手もあります。権力者がいちばん監視される対象になることによって、国民の健全性を担保しようと。これも1つの解ですよね。

山口:そう思います。オールドタイプの考え方としては、権力の中に優れた人を送り込むのが1番でしょう。だったら尾原さんが政界に進出するのが最適解ということになる(笑)。

しかし今なら、まったく逆の考え方をしたほうが合理的です。それが監視で、僕なりに表現するなら「オピニオン(主張)」と「イグジット(退出)」です。

先日、ダボス会議から戻ったばかりの竹中平蔵先生から、面白いお話を伺ったんです。ダボスではいくつものカンファレンスがありますが、パネリストが全員男性だと、参加者はものすごいブーイングを起こして退場してしまうそうです。あるいはスターバックスの店員さんから伺ったのですが、ヨーロッパの店でストローを置いていると、すぐにお客さんからクレームがくるらしい。

こういう姿勢はすごく大事だと思う。自分なりのフェアネスの考え方を大事にして、そこから外れているものがあれば「おかしい」と声を上げなければいけないし、対話が成立しないと思えばその場を出なければいけない。

『アルゴリズム フェアネス もっと自由に生きるために、ぼくたちが知るべきこと』(書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします)

尾原:そうですね。だから何かを適切に監視するにはオピニオンを持たないといけないし、そのオピニオンを行動で示すにはイグジットという権利を使う手もあると。

山口:今は個人が力を持っている時代ですからね。例えば顧客や従業員や株主という立場なら、対象の組織のなんらかの活動について「おかしい」とツイートすることは容易でしょう。最初はたった1人の声でも、共感を得て拡散されれば大きな声になりえます。

それでも組織が変わらないなら、顧客や従業員や株主という立場から抜けてしまえばいい。そういう人が続出すれば、組織としては大変困るはずです。

尾原:場合によっては、国を脱出することもできますからね。それこそウーバーのドライバーとして高い評価を得られれば、どこの国に行っても働き口には困らないと思います。それくらい自由に生きられるということを、もっと自覚してもいいんじゃないでしょうか。

(構成:島田栄昭)

(第3回に続く)

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