「2つの階層」になった現代をうまく生きる方法 ネットが生んだ「自由都市」の歩き方
山口:言い換えるなら、僕たちは2つの世界を自由に行き来できるということです。物理レイヤーとしては日本に住んでいる日本人、ベトナムを出たことがないベトナム人でも、架空レイヤーとしてはMIT(マサチューセッツ工科大学)の授業を存分に聞くことができる。
その意味では、無限に機会が開かれた状態だと思います。それに伴って、今後は新しい職業がどんどん生まれてくるでしょう。
実は初めてユーチューブが登場したころ、僕はある本に「今は想像もつかないが、やがて新しいクリエーターが登場するだろう」と書いたんです。同じ映像でもテレビ番組やテレビCMには、時間をはじめ多くの枠や制限があります。一方、ユーチューブにはそれがありません。
極論すれば、ヒマラヤの頂上をウェブカメラで映し続けるだけでもコンテンツになる。その自由さを享受して、何か新しいものを生み出す人が出てくるだろうと。
言うまでもなく、それが今日のユーチューバーですね。ただしヒカキンなどが活躍し始めたころ、まだ「ユーチューバー」という言葉はありませんでした。彼らが成功パターンとして認知されて、初めてそう呼ばれるようになりました。概念はつねに後追いなんです。
それは今後も同じこと。フレームやテクノロジーがどんどん進化する中で、今は名前すらない新しい職業やクリエーターが生まれると思います。
では、そのファーストムーバーになるにはどうすればいいか。それには基礎教養が重要なんですね。何が起きているのか、理解できないといけない。
僕たちは強大な「力」を持っている
尾原:そうなんです。それが、まさに『アルゴリズムフェアネス』で言いたかったことの1つ。どこから来たかがわからなければ、どこへ行くのかもわからない。これはむしろ山口さんの専門分野かもしれませんが、「哲学」を知ることが大事なんですよね。アップルにもグーグルにも哲学がある。彼らがそれぞれ目指したもの、歩んできた道をトレースすることによって、これから先も読みやすくなります。