「2つの階層」になった現代をうまく生きる方法 ネットが生んだ「自由都市」の歩き方

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尾原:例えばアマゾンの場合、根底にある哲学は「カスタマーオブセッション」。「オブセッション」とは、キツネや悪魔に取り憑かれるとか、強迫観念といった意味です。つまり、「もうユーザーのことしか考えられない」と。「カスタマーファースト」というとセカンドにクライアント、サードに従業員などが意識されますが、それどころではないんです。

その哲学から生まれたのが、カスタマーによるレビューです。当初、出版社などの出品者側は抵抗しましたが、アマゾンは譲らなかった。今でこそ当たり前ですが、これは革命的なサービスだったんです。

ネット時代の勝利の方程式が出来上がった

山口:つまり、パワーシフトが起きたんですよね。僕はかつて広告の仕事をしていましたが、これはある意味でテクノクラートの世界です。広告主の要望に沿って、出す情報・出さない情報をすべてコントロールするわけです。

『アルゴリズム フェアネス もっと自由に生きるために、ぼくたちが知るべきこと』(書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします)

しかしカスタマーのレビューは、まったくコントロールできません。莫大な広告費をかけた商品であっても、たった1人のネガティブなレビューで撤退を余儀なくされるおそれもある。個人がそれだけパワーを持つようになったということです。

そのプラットフォームを提供したのがアマゾン。カスタマーにとっては大きな魅力ですが、逆にアマゾン側も、カスタマーがわざわざ時間をかけて情報を書き込んでくれることで、プラットフォームとしての価値を上げている。その結果、流通における軸足はかなりカスタマー側に移った感じがします。

尾原:「カスタマーオブセッション」を追求して、権力が勝手に拡大する構造を作ったところがすごい。ネット時代の勝利の方程式ですね。

いずれにせよ、テクノロジーの進化によって、僕たちは以前とは比べものにならないほど大きな力と機会を持っている。それだけ、より自由に、ハッピーに生きられる可能性が広がったということです。まずはそのことを自覚して、貪欲に知識を吸収し、世の中をもっとポジティブに捉えてもいいと思いますね。

(構成:島田栄昭)

(第2回に続く)

尾原 和啓 ITエバンジェリスト

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おばら かずひろ / Kazuhiro Obara

1970年生まれ。京都大学大学院工学研究科応用人工知能論講座修了。マッキンゼー・アンド・カンパニーにてキャリアをスタートし、NTTドコモのiモード事業立ち上げ支援、リクルート、ケイ・ラボラトリー(現:KLab、取締役)、コーポレートディレクション、サイバード、電子金券開発、リクルート(2回目)、オプト、Google、楽天(執行役員)の事業企画、投資、新規事業に従事。経済産業省対外通商政策委員、産業総合研究所人工知能センターアドバイザーなどを歴任。著書に『モチベーション革命』『アフターデジタル』(共著)、『ザ・プラットフォーム』『どこでも誰とでも働ける』『IT ビジネスの原理』などがある。

 

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山口 周 独立研究者・著作者・パブリックスピーカー、ライプニッツ代表

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やまぐち しゅう / Shu Yamaguchi

1970年東京都生まれ。慶応義塾大学文学部哲学科、同大学院文学研究科美学美術史学専攻修士課程修了。電通、ボストン コンサルティング グループ、コーン・フェリー等で企業戦略策定、文化政策立案、組織開発などに従事。中川政七商店社外取締役。株式会社モバイルファクトリー社外取締役。『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』でビジネス書大賞2018準大賞、HRアワード2018最優秀賞(書籍部門)を受賞。

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