米独の諜報機関が世界各国公電を盗聴した手法 5Gのインフラ構築をめぐる議論にも影響か

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現在ではNSAや英国の政府通信本部(GCHQ)などが、電話やメールの傍受をグローバルな規模で実施している。エドワード・スノーデンが2013年に暴露したように、シグナル・インテリジェンス(略称SIGINT)と呼ばれる電子盗聴は、今日の諜報活動においては最も重要な柱の一つだ。

1970年代には、電子盗聴が今日ほど発達していなかった。しかしCIAとBNDは、各国政府が機密情報を送る際に使う暗号化装置の販売元を掌中に収めることによって、グローバルな傍受活動を実施することに成功した。彼らはCX-52に仕込んだ抜け穴を使って、各国がいちばん隠したいと思う情報を読み取ることができた。

現在NSAが行っているデジタル諜報をアナログ時代に実施した、先駆的なスパイ活動ということができる。英国のウォーウイック大学のロバート・オルドリッチ教授は、「ルビコン作戦は、世界の諜報活動の歴史の中で最も重要かつ成功した作戦の一つだった」と指摘している。

友好国の盗聴に積極的だったアメリカ

クリプト社と諜報機関との関連については、1996年にドイツのニュース週刊誌シュピーゲルが最初に報じて以来、いくつかのメディアが伝えていた。今回の報道の新しい点は、ZDFが作戦の詳細を記した約280ページのドイツ語の内部文書を入手したことだ。

この文書は、「この作戦によって第3世界に属する国だけではなく、アイルランド、イタリア、ポルトガル、スペインなど欧州諸国の外交・軍事に関する通信を総合的に傍受することができる」と記しており、アメリカやドイツの諜報機関は友好国政府に対しても諜報活動を行っていたことが明らかになった。

文書によると、どの国にCX-52を売るかについて、BNDとCIAの意見はしばしば食い違った。ドイツ側は「友好国の盗聴を行うべきではない」と主張したのに対して、アメリカ側がすべての国の暗号電を作戦の対象にするよう求めた。

ドイツでは、2013年にメルケル首相の携帯電話がアメリカの諜報機関によって盗聴されていた疑いが強まり、首相は「友好国間の盗聴は許しがたい」と発言したことがある。それだけに今回、ZDFが公表した文書から、BNDが約20年間にわたって参加した盗聴活動の対象に友好国も含まれていたことは、メルケル政権にとっても都合が悪い事態だ。

ただし諜報に携わった元政府高官たちは、この作戦の重要性を高く評価している。1991年から7年間にわたり、コール政権の連邦首相府でBNDとの連絡役を務めたベルント・シュミットバウアー氏は、「ルビコン作戦は、世界の安全と平和を高めるのに貢献した。この作戦がもたらした情報を、他の方法で入手することは不可能だった」と述べ、作戦を弁護している。

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