ソフトバンクG「大赤字決算」が映す根本的難題 戦略的持ち株会社としての戦略は大きな後退

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SBGにはエリオットから「株主価値向上」を迫られる一方で、さまざまなステークホルダー(利害関係者)価値を向上させていくことも同時に求められている。2019年8月、アメリカ主要企業の経営者団体、ビジネス・ラウンドテーブルが「株主第一主義」を見直し、従業員、地域社会、地球環境等を尊重する経営への転換を宣言した。

SBGに対してはアメリカ・メディアで批判的な論調が多くなっているが、批判の対象も投資先から始まって、投資手法や交渉手法、さらに最近では同社の社員価値へのスタンスや企業文化への批判も見受けられるようになってきている。

「無謀、巧言令色、ハラスメントの文化」

特にブルームバーグ・ビジネスウイーク(Bloomberg Businessweek)の2019年12月23日号において、「Season’s Greetings from Softbank」というタイトルと米ドル札束が燃えているイラストが表紙となり、「無謀、巧言令色、ハラスメントの文化」(a culture of recklessness, sycophancy, and harassment)という表現をサブタイトルとした特集記事は象徴的なものであった。

グローバルな投資マーケットにおけるSBGの問題の所在が、毀損したブランド価値にある中で、SBGには、株主だけではなく、従業員、地域社会、地球環境等を尊重する経営への難しい舵取りが突き付けられていると言えよう。SBGには、株価向上や株主第一主義に偏重しない経営を期待したい。

田中 道昭 立教大学ビジネススクール教授

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たなか みちあき / Michiaki Tanaka

シカゴ大学経営大学院MBA。専門は企業戦略&マーケティング戦略およびミッション・マネジメント&リーダーシップ。三菱東京UFJ銀行投資銀行部門調査役、シティバンク資産証券部トランザクター(バイスプレジデント)などを経て、現在は株式会社マージングポイント代表取締役社長。主な著書に『「ミッション」は武器になる』(NHK出版新書)、『アマゾンが描く2022年の世界』(PHPビジネス新書)、『GAFA×BATH 米中メガテック企業の競争戦略』(日本経済新聞出版社)など。

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