不動産業界は好調な賃貸にも陰り、投資回収促進でも財務基盤改善は限定的《スタンダード&プアーズの業界展望》


有利子負債の増加は一服する可能性

三菱地所、三井不動産の両社は、過去3年ほど投資先行で有利子負債を増加させており、賃貸資産からの安定的なキャッシュフローでカバーしているとはいえ、財務負担は増していた。しかし、投資回収の促進と設備投資の圧縮により、有利子負債の増加は一服することは財務が格付け上ポジティブであるため、財務基盤の悪化には歯止めがかかるとスタンダード&プアーズは考えている。

ただし、不動産市況の回復が明確にならなければ、回収幅は小幅にとどまる可能性があり、有利子負債の削減も大きくは進展しないだろう。このため、各社の収益・財務基盤が明確な回復基調に転ずるにはまだ時間がかかるだろう。さらに、市況が回復期に入れば、各社とも投資を再開する可能性があり、そのタイミングが早ければ、信用力に下方圧力がかかる可能性もあるだろう。

09年3月期は、総資本に占める有利子負債の比率は、三菱地所、三井不動産ともに悪化し、09年4~9月期も期中は有利子負債が膨らむ特性もあって、同比率の改善幅は小幅だった。しかし両社とも、新規ビルの寄与や高いリーシング力を背景に、保有資産の生み出す純収益(ネット・オペレーティング・インカム、NOI)が今後大幅に下落するとは考えにくく、保有資産の評価額は一定水準が保たれるとスタンダード&プアーズは考えている。

このため、実質的なバランスシートの健全性が引き続き格付けの下支え要因になるとスタンダード&プアーズは考えている。不動産会社の保有資産は製造業などの保有する固定資産と比べ流動性・換金性が高い点も、格付け分析上、ポジティブに考慮できる。

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